フードデリバリーの配達は、副業として始めやすい仕事に見えます。ただし始める前に一度だけ確認しなければならないことがあります。使う車両によって、行政への届出が必要かどうかが変わるという点です。
ここを知らずに軽自動車やバイクで始めると、無届けで有償運送を行うことになります。逆に自転車と125cc以下の原付は届出が不要で、その日から始められます。
この記事は、①車両ごとの届出の要否 → ②業務委託という契約の意味 → ③収入と経費の計算 → ④保険と事故への備え → ⑤税金という順で整理します。
この記事で分かること
- 車両ごとに届出が必要かどうかの正確な線引き
- 業務委託契約で働くと何が変わるか
- 収入から差し引ける経費と、実質の時間あたり金額
- 保険を自分で用意する必要がある理由
- 確定申告の基準と、会社員が確認すべきこと
【最初に確認】車両によって届出の要否が変わります
荷物を有償で運ぶ事業は、貨物自動車運送事業法の対象になります。フードデリバリーの配達も、使う車両によって貨物軽自動車運送事業の届出が必要になります。
| 使う手段 | 届出 | 備考 |
|---|---|---|
| 自転車 | 不要 | 電動アシスト自転車も同様 |
| 125cc以下の原付バイク | 不要 | 副業として最も始めやすい区分 |
| 126cc以上の二輪車 | 必要 | 事業用ナンバー(黒ナンバー)になる |
| 軽貨物車 | 必要 | 同上 |
| 軽乗用車 | 必要 | 2022年10月27日から使用可能になった |
貨物軽自動車運送事業は許可ではなく届出制で、貨物自動車運送事業法に基づき、事業開始前に運輸支局へ届け出ます。届出をすると事業用ナンバー(いわゆる黒ナンバー)になります。
出典:国土交通省近畿運輸局「貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー)の届出について」
副業として現実的なのは自転車か125cc以下
届出が不要な区分から始めるのが、手続きの面では最も簡単です。ただし体力の消耗と天候の影響は大きくなります。
| 手段 | 初期費用 | 体力の消耗 | 雨天・冬季 | 1件あたりの移動 |
|---|---|---|---|---|
| 自転車(手持ちのもの) | ほぼゼロ | 大きい | 影響が大きい | 短距離向き |
| 電動アシスト自転車 | 購入・レンタル費用 | 中 | 影響が大きい | 中距離まで |
| 125cc以下の原付 | 車両・保険 | 小 | 影響が大きい | 中〜長距離 |
| 軽自動車(届出必要) | 車両・保険・届出 | 小 | 影響が小さい | 長距離向き |
雨天は視界が悪く路面が滑りやすいため事故のリスクが上がります。スマートフォンの画面も水滴で見えにくくなります。夏場の直射日光、冬場の路面凍結も稼働の難易度を上げます。
業務委託という契約形態の意味
配達の仕事は多くの場合業務委託(請負)です。アルバイトとは扱いが根本的に違います。
| 論点 | アルバイト(雇用契約) | 配達(業務委託) |
|---|---|---|
| 所得区分 | 給与所得 | 事業所得または雑所得 |
| 経費 | 原則として計上できない | 必要経費を計上できる |
| 労働時間の通算 | 本業と通算される | 通算されない |
| 最低賃金 | 適用される | 適用されない |
| 労災保険 | 適用される | 原則として適用されない |
| 稼働時間 | シフトで拘束される | 自分で決められる |
ここで理解しておくべきことが2つあります。
1つは経費を計上できるという利点です。配達は移動と機材を伴うため、経費が発生しやすい仕事です。記録を残せば手取りに直接影響します。
もう1つは労災保険が原則として適用されないという点です。稼働中に事故に遭っても、雇用されている人と同じ保護は受けられません。次項で扱います。
保険は自分で用意する必要があります
これが配達の副業で最も重要な確認事項です。業務委託は労災保険の対象外のため、備えを自分で用意することになります。
| 備えるもの | 何に対する備えか |
|---|---|
| 対人・対物の賠償 | 歩行者や他の車両、建物に損害を与えた場合 |
| 自分のけがへの備え | 転倒・事故で治療や休業が必要になった場合 |
| 預かった商品への補償 | 配達中に商品を破損・汚損した場合 |
| 車両の保険 | バイク・自動車を使う場合の任意保険 |
配達プラットフォームが独自の補償制度を用意している場合があります。ただし内容と適用条件はサービスごとに異なり、変更もされます。「補償があるらしい」で済ませず、登録時に規約で確認してください。
あわせて、自転車でも保険は必要です。自転車の事故で高額の賠償が生じる例があります。自治体によって自転車保険への加入が条例で求められている場合もあるため、居住地の制度を確認してください。
2026年4月から自転車に青切符が適用されています
自転車で配達する人に直接関わる制度変更があります。2026年4月1日から、自転車の交通違反に交通反則通告制度(いわゆる青切符)が適用されました。対象は16歳以上の運転者です。16歳未満は従来通り指導警告が行われます。
交通反則通告制度は、交通違反をした場合の手続を簡略化する仕組みです。一定期間内に反則金を納めると、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けずに事件が処理されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用開始 | 2026年4月1日 |
| 対象 | 16歳以上の自転車運転者 |
| 手続 | 青切符と納付書が交付される。違反を認める場合は取締りの翌日から原則7日以内に反則金を仮納付する |
| 納付した場合 | 刑事手続に移行せず、起訴されない |
出典:警察庁「自転車の新しい制度」
配達は短時間で多くの距離を走る仕事です。急いでいるときほど違反のリスクが上がります。対象となる違反行為と反則金の額は警察庁の自転車ルールブックで確認してください。
実務上の意味は明確です。1件あたりの報酬より、反則金のほうが高くなる場合があります。急ぐことが収入につながらない構造になったと理解してください。
届出と保険の条件を確認できたら、稼働できるエリアを見てから判断できます
収入は「経費を引いた後の時間あたり」で見る
配達の収入は件数と距離で変わるため、時間あたりの金額を自分で計算する必要があります。参考として、副業全体の時間あたり収入は平均3,617円、中央値2,083円という調査結果があります(出典:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」/2025年10月28日発表・調査期間2025年8月1日〜7日)。
ただし配達の場合、この数字から次を差し引いて考えてください。
| 差し引くもの | 内容 |
|---|---|
| 待機時間 | 依頼が来ない時間も拘束されている |
| 移動費 | 燃料費、電動自転車の充電、車両の消耗 |
| 機材の費用 | 配達バッグ、スマホホルダー、雨具 |
| 通信費 | 稼働中は通信を使い続ける |
| 保険料 | 自分で用意する分 |
実務としては、稼働1回ごとに「稼働時間・件数・受取額・移動距離」を記録してください。3回分あれば自分の時間あたり金額が見えます。
経費として記録するもの
- 配達バッグ、保温バッグ
- スマートフォンホルダー、モバイルバッテリー
- 雨具、防寒具、手袋
- 燃料費、電動自転車の電気代
- 車両の整備費、消耗品(タイヤ、ブレーキなど)
- 通信費(使用割合で按分)
- 保険料(業務に関わる部分)
按分が必要なものは合理的な基準で説明できることが前提です。どこまで認められるかは個別の事情で判断されるため、金額が大きい場合は税理士に確認してください。
エリアと時間帯で結果が変わります
配達の収入を決める最大の要因は、実は自分の努力量ではありません。稼働するエリアに加盟店と注文がどれだけあるかです。
| 確認すること | 見方 |
|---|---|
| 加盟店の密度 | 注文アプリを利用者として開き、自分の稼働エリアに店がいくつ表示されるかを見る |
| 店の集まり方 | 飲食店が一箇所に集まっている地域は、次の依頼までの移動が短い |
| 住宅の密度 | 届け先が近い地域のほうが1件あたりの時間が短くなる |
| 坂の有無 | 自転車の場合、起伏の大きい地域は消耗が激しい |
| 建物の種類 | 高層マンションはエレベーター待ちで時間を取られる |
最後の項目は見落とされやすい点です。同じ距離でも、届け先が戸建てか高層階かで所要時間が数分変わります。件数をこなす仕事なので、この数分の積み上がりは大きくなります。
依頼が集中する時間帯
需要は食事の時間帯に集中します。稼働時間が限られている副業なら、ピークだけを狙うほうが時間あたりの金額は上がります。
- 昼のピーク — おおむね11時台から14時台。平日はオフィス街、休日は住宅地が中心になる
- 夜のピーク — おおむね18時台から21時台。1日で最も注文が多い時間帯
- ピーク外 — 待機時間が長くなる。時間あたりの金額は下がる
会社員が平日に稼働する場合、現実的なのは夜のピークのみです。ただし翌日に本業があるため、終了時刻を先に決めてください。「あと1件」を繰り返すと睡眠時間が削られます。
雨天・イベント時の考え方
悪天候の日は注文が増える傾向があります。加算が設定される場合もあります。ただし事故のリスクが上がることと引き換えです。
判断の基準を先に決めておいてください。「路面が凍結している日は稼働しない」「視界が確保できない強い雨では稼働しない」といった線引きです。その場の報酬額で判断すると、危険な条件でも走ることになります。
稼働前に準備するもの
| 準備するもの | 理由 |
|---|---|
| モバイルバッテリー | アプリと地図を使い続けるため電池の消耗が早い。切れると稼働が止まる |
| スマホホルダー | 手に持って運転すると違反になる |
| 保温・保冷バッグ | 商品の品質に直結する。評価にも影響する |
| 雨具(上下分かれたもの) | 傘は使えない。運転しながら着られるものを選ぶ |
| 現金の小銭 | 現金払いに対応する場合に必要。対応可否は設定で選べることが多い |
| 飲み物 | 夏場は熱中症のリスクがある |
1番目が最も忘れられやすく、影響が大きい項目です。電池が切れた時点でその日の稼働は終わります。容量に余裕のあるものを用意してください。
事故・トラブルが起きたときの対応
| 起きたこと | 対応 |
|---|---|
| 交通事故に遭った/起こした | 負傷者の救護と警察への届出が優先。その後プラットフォームへ連絡 |
| 商品を落とした・破損した | 自己判断で処理せず、アプリのサポート経由で報告する |
| 届け先が見つからない | アプリの手順に従う。独断で置いて帰らない |
| 報酬が支払われない | 稼働記録のスクリーンショットを保存し、サポートに問い合わせる |
| 体調が悪くなった | 稼働を止める。無理に続けると事故につながる |
共通して重要なのは記録を残すことです。稼働画面、受取額、やりとりのスクリーンショットを残しておくと、後の確認に使えます。
続けるかどうかを3か月で判断する
配達は始めるのが簡単な一方、続けるかどうかの判断がしにくい仕事です。基準を先に決めておいてください。
| 時期 | やること | 判断すること |
|---|---|---|
| 1か月目 | 稼働ごとに時間・件数・受取額・距離を記録する | 自分の時間あたり金額を把握する |
| 2か月目 | エリアと時間帯を変えて比べる | どの条件が最も効率が良いか |
| 3か月目 | 経費を差し引いた手取りを計算する | 続ける/条件を変える/やめる |
3か月目の判断で見るのは金額だけではありません。本業への影響、疲労の蓄積、事故のニアミスの回数も含めて考えてください。
とくにニアミスです。「危なかった」と感じた回数が増えているなら、稼働量か走り方に問題があります。事故は起きてからでは戻せません。
税金と勤務先の確認
確定申告の基準
- 本業が給与所得で、副業の所得が年20万円を超える場合、確定申告が必要になります
- 20万円以下でも住民税の申告は必要です
- 「所得」は収入から必要経費を引いた金額です。配達は経費が発生しやすいため、この差は小さくありません
- 経費を計上するには領収書と記録が必要です。始めた日から残してください
会社員が確認すること
まず就業規則の副業規定を確認してください。禁止か、届出制か、許可制かで対応が変わります。
業務委託であれば労働時間は本業と通算されません。ただし就業規則上の届出義務は契約形態とは別の話です。規定を読んで判断してください。
また、配達は身体を使う仕事です。本業の翌日に影響が出る稼働量にしないでください。事故のリスクは疲労と直結します。
評価を落とさないための実務
配達は評価が依頼の入りやすさに影響する仕組みが一般的です。技術より、手順を守ることで差がつきます。
| 場面 | やること |
|---|---|
| 店で受け取るとき | 注文番号と品数を照合する。汁物は水平を保てる向きに入れる |
| 移動中 | 急発進・急ブレーキを避ける。商品が動くと中身が崩れる |
| 届け先が分かりにくいとき | アプリのメッセージで先に連絡する。無言で長時間探さない |
| 置き配のとき | 指定場所を守り、写真を残す。雨天は濡れない位置に置く |
| 遅れそうなとき | 分かった時点で連絡する。黙って遅れるほうが評価に響く |
ポイントは「先に伝える」ことです。遅れそうなとき、品物が足りないとき、場所が分からないとき——いずれも早く連絡するほど問題が小さくなります。
商品の状態を守る工夫
- 仕切りや緩衝材を用意する — バッグの中で商品が動かないようにする
- 汁物は水平に保つ — 傾けると漏れる。バッグの底面が水平になるよう背負う
- 温かいものと冷たいものを分ける — 同じ区画に入れると両方の品質が落ちる
- 雨天はバッグごと防水する — 中の紙袋が濡れると底が抜けます
これらは1回の失敗の損失が大きい部分です。商品を破損すると、その1件の報酬では埋まりません。
他のサービスも確認する
配達のプラットフォームは複数あります。報酬の仕組み、稼働できるエリア、対応する車両の条件はサービスごとに違います。1つに絞る前に、自分の稼働できる時間帯と地域で依頼があるかを確認してください。
比較するときの観点は次の3つです。
- 自分の稼働エリアに加盟店が多いか — 依頼の数が収入を決めます
- 報酬の計算方法 — 距離制か件数制か、時間帯の加算があるか
- 使える車両の条件 — 自転車で登録できるか
menuフードデリバリー配達
フードデリバリーの配達を行うサービスです。配達クルーは業務委託契約で、稼働する時間帯を自分で決められます。対応エリアが限られるため、まず自分の住む地域が対象かの確認が必要です。報酬の計算方法と必要な装備・保険の扱いを公式サイトで確認してください。
報酬額、キャンペーン、対応エリア、登録条件は変更される場合があります。申し込み前に必ず公式サイトで最新の内容を確認してください。
始める前のチェックリスト
- 使う車両が届出の必要な区分かどうかを確認した
- 126cc以上・軽自動車を使う場合、貨物軽自動車運送事業の届出を確認した
- 契約が業務委託であることを理解した(労災は原則適用されない)
- 賠償と自分のけがへの備えを用意した
- 自転車の場合、居住地の自転車保険に関する条例を確認した
- モバイルバッテリーとスマホホルダーを用意した
- 経費の領収書を残す準備をした
- 稼働記録(時間・件数・受取額・距離)を残すと決めた
- 本業の就業規則を確認した
- 確定申告と住民税申告の基準を確認した
やめておいたほうがいい進め方
- 車両の区分を確認せずに始める — 126cc以上や軽自動車は届出が必要です
- 保険を用意しないまま稼働する — 業務委託は労災が原則適用されません
- スマホを手に持って運転する — 違反です。ホルダーを用意してください
- 報酬を急いで件数を詰め込む — 危険な運転は事故につながります。収入より優先されます
- 経費の記録を残さない — 所得が実際より大きく計算され、税負担が増えます
- 悪天候に無理に稼働する — 雨天は視界と路面の条件が悪化します
- 「あと1件」を繰り返す — 終了時刻を先に決めておかないと睡眠時間が削られます
- 本業の疲労を無視する
- 本業の疲労を無視する — 身体を使う仕事です。翌日に影響する稼働量にしないでください
よくある質問
Q. 自転車で始めるのに届出は必要ですか。
不要です。自転車と125cc以下の原付バイクは貨物軽自動車運送事業の届出の対象外です。126cc以上の二輪車、軽貨物車・軽乗用車は届出が必要です。
Q. どのくらい稼げますか。
件数と距離で変わるため一律には言えません。副業全体の時間あたり収入は平均3,617円、中央値2,083円という調査結果があります。配達の場合は待機時間と移動費・機材費を差し引いて計算してください。
Q. 会社に副業がばれませんか。
まず就業規則を確認してください。業務委託であれば労働時間は本業と通算されませんが、就業規則上の届出義務は契約形態とは別の話です。
まとめ
- 自転車と125cc以下は届出不要。126cc以上・軽貨物車・軽乗用車は貨物軽自動車運送事業の届出が必要
- 軽乗用車は2022年10月27日から使用可能になった
- 配達は多くの場合業務委託。経費を計上できる一方、労災は原則適用されない
- 保険は自分で用意する。プラットフォームの補償は内容と条件を規約で確認する
- 自転車でも保険は必要。自治体の条例も確認する
- 収入は待機時間・移動費・機材費を差し引いた時間あたりで判断する
- 経費の領収書と稼働記録は始めた日から残す
- 20万円以下でも住民税の申告は必要
- 業務委託なら労働時間は本業と通算されないが、就業規則の確認は別途必要
- 2026年4月1日から自転車に青切符が適用。対象は16歳以上。急ぐことが収入につながらない構造になった
- 収入を左右するのは努力量より稼働エリアの加盟店の密度
- 依頼のピークはおおむね11時台〜14時台と18時台〜21時台
- 遅れ・不足・場所不明は分かった時点で先に連絡する
- モバイルバッテリーとスマホホルダーは必須。手持ち運転は違反
配達は始めるまでの手続きが軽い代わりに、リスクを自分で管理する仕事です。保険と記録という2つの準備だけは、稼働の前に済ませておいてください。
法令や制度は改正されます。届出の要否については国土交通省・運輸支局、税金については国税庁と居住地の自治体で確認してください。報酬やキャンペーンの条件は各サービスの公式サイトで最新の内容を確認してください。
Sources:
国土交通省近畿運輸局|貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー)の届出について
パーソル総合研究所|第四回 副業の実態・意識に関する定量調査


