副業の記事はふつう「どう稼ぐか」を書きます。この記事は逆です。
副業をしている人の26.9%が過重労働の状態にあります。本業+副業の残業が月45時間を超える人は3割以上。そのうち半数以上が、本業先に申告していません。
「申告していない」という部分が重要です。会社が把握していない状態で、月45時間超の労働が発生している。これは事故が起きたときに誰も守ってくれない構造です。
この記事では、その仕組みを説明したうえで、時間を売らずに収入を作る選択肢を整理します。稼ぐことを否定する記事ではありません。

この記事で分かること
- 過重労働の実際の数字と、企業側の認識とのずれ
- 労働時間の通算という制度の意味
- 未申告が危ない具体的な理由
- 時間を売らずに収入を作る型
- その入口になるサービス8つ
数字を並べます

| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 個人の過重労働率 | 26.9% |
| 企業が認識していた過重労働 | 18.5% |
| 本業+副業の残業が月45時間超 | 3割以上(うち半数以上が本業先に未申告) |
| 副業の1か月あたりの時間 | 平均23.0時間 |
| 業務委託の労働者性(9項目中) | 平均3.3項目に該当 |
出典:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」(2025年10月28日発表/企業n=1,500、個人n=62,320/2026年7月30日確認)
最初の2行のずれを見てください
実際に過重労働なのは26.9%。企業が認識していたのは18.5%。差は8.4ポイントです。
この差が意味することは1つです。働きすぎている人の一部は、会社から見えていません。会社が把握していなければ、対処も行われません。
そして3行目です。月45時間超の人のうち半数以上が本業先に申告していない——ここが問題の中心にあります。
労働時間の通算という制度

なぜ申告が関係するのか。制度を確認します。
雇用契約どうしの場合、労働時間は通算されます。本業と副業のどちらもアルバイトや正社員などの雇用契約なら、労働時間は合算して考えられます。
| 組み合わせ | 労働時間の通算 | 意味 |
|---|---|---|
| 本業(雇用)+副業(雇用) | 通算される | 合算した時間で法定労働時間や割増賃金を考える |
| 本業(雇用)+副業(業務委託) | 通算されない | 制度上は別。ただし身体は1つ |
| 本業(雇用)+投資 | 該当しない | 労働ではない |
2行目に注意してください。業務委託なら通算されないのは制度の話です。疲労は合算されます。「制度上セーフだから大丈夫」ではありません。
割増賃金の基準も確認しておく
労働基準法第37条で、割増賃金の率が定められています。
| 種類 | 割増率 |
|---|---|
| 時間外労働 | 2割5分以上 |
| 深夜労働(原則22時〜5時) | 2割5分以上 |
| 法定休日労働 | 3割5分以上 |
| 月60時間超の時間外 | 5割以上 |
出典:厚生労働省 福岡労働局「時間外、休日及び深夜の割増賃金」。なお月60時間超の5割以上は2023年4月1日から中小企業にも適用されています。
未申告が危ない3つの理由
「言わなければバレない」と考える人に対して、具体的なリスクを書きます。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 1. 就業規則違反になる | 届出制・許可制の会社で無申告なら規定違反。収入より処分のほうが痛い |
| 2. 健康管理の対象外になる | 会社は把握していない時間を管理できない。産業医面談などの対象にもならない |
| 3. 事故・病気のときに争いになる | 労働時間の実態が記録されていないと、原因の判断が困難になる |
2番目が実質的に最も重いです。長時間労働に対する健康管理の仕組みは、会社が労働時間を把握していることを前提に動きます。把握されていない時間は、その仕組みの外に置かれます。
企業のサポート実施率は36.3%(前回比+9.0pt)まで伸びています。容認率の伸び(+3.4pt)より速いのです。申告したほうが支援を受けられる会社が増えているという状況で、隠す判断は合理性を失いつつあります。
自分の状態を数字で確認する

感覚ではなく計算してください。次の合計を出します。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 本業の月間残業時間 | 20時間 |
| 副業の月間稼働時間 | 23時間(調査の平均値) |
| 合計 | 43時間 |
| 移動時間(副業の往復) | +8時間 |
| 実質の合計 | 51時間 |
この計算で分かることがあります。本業の残業が20時間、副業が平均並みの23時間でも、移動を含めれば月45時間を超えます。「自分は働きすぎていない」という感覚は、往復の移動を数えていないことが原因である場合が多いのです。
危険なサインを決めておく
自分では気づきにくいため、基準を先に決めてください。
- 睡眠時間が6時間を下回る日が続いている
- 休日に起きる時刻が2時間以上遅くなっている
- 本業で同じミスを繰り返している
- 作業に取りかかるまでの時間が長くなっている
- 食事や入浴を後回しにしている
- 「危なかった」と感じる場面(運転・作業)が増えている
1番目と6番目は、そのまま事故につながる領域です。該当する場合は、金額の目標より優先して稼働を減らしてください。
業務委託でも「労働者」に近い働き方がある
もう1つ、同じ調査に見落としやすい数字があります。
業務委託で働く人の労働者性は、9項目中で平均3.3項目に該当していました。
これは何を意味するか。契約上は業務委託でも、実態が雇用に近い働き方をしているケースがあるということです。
| 実態が雇用に近づくサイン | なぜ問題になるか |
|---|---|
| 仕事の依頼を断れない | 裁量がない=業務委託の前提が崩れている |
| 作業の時間・場所を指定される | 拘束されている状態 |
| 進め方を細かく指示される | 手段の裁量がない |
| 他の依頼を受けることを制限される | 専属に近い状態 |
| 報酬が時間で決まる | 成果ではなく時間に対する対価になっている |
なぜこれが労働時間の話に関わるのか。業務委託は「労働時間が通算されない」代わりに「自分で稼働量を決められる」ことが前提です。その前提が崩れていると、通算されないのに拘束される——最も条件の悪い状態になります。
該当する場合にやること
- 契約書を読み直す — 実際の運用と契約の内容が一致しているか
- 断った経験があるか思い出す — 一度も断れていないなら裁量がない状態です
- 報酬の決まり方を確認する — 時間で決まっているなら性質を確認する
- 稼働記録を残す — 実態を示す材料になります
- 疑問があれば労働基準監督署に相談する — 契約の名称ではなく実態で判断されます
5番目は覚えておいてください。労働者かどうかは契約書のタイトルで決まるものではなく、働き方の実態で判断されます。「業務委託契約書」と書いてあることが、そのまま結論になるわけではありません。
時間を売らない型の代表は、一度作った素材が繰り返し売れる形です。
【本題】時間を売らずに収入を作る

ここが解決策です。過重労働の根本原因は「時間 × 単価」でしか収入が増えない構造にあります。時間を増やす以外の方法がないなら、増やすしかなくなります。
そこで、収入の作り方を性質で分けます。
| 型 | 収入の仕組み | 稼働時間との関係 |
|---|---|---|
| 労働型 | 働いた時間 × 単価 | 比例する。増やすには時間を増やすしかない |
| ストック型 | 作ったものが継続的に売れる | 作った後は稼働と切り離れる |
| 在庫消化型 | 持っているものを売る | 在庫が尽きれば終わる(一時的) |
| データ提供型 | 利用状況などの提供に対する対価 | 稼働がほぼ不要 |
| 裁量型 | 時間 × 単価だが、単価と量を自分で決める | 比例するが、上限を自分で管理できる |
過重労働を避けたいなら、労働型の比率を下げて、他の型を混ぜるのが構造的な解決です。
ストック型の現実
誤解を避けるために正直に書きます。ストック型は「作るまでが大変で、作った後も売れる保証がない」型です。
- 最初は収入がゼロ — 作る時間は完全に無報酬です
- 売れないものは売れない — 作れば売れるわけではありません
- 数が必要 — 1つで成立することは稀です
- ただし、売れ始めると稼働と切り離れる — ここが労働型との決定的な違いです
したがって現実的な進め方はこうなります。労働型で生活を支えながら、余力の一部をストック型に回す。いきなり切り替えるものではありません。
入口になるサービス8選
ストック型3つ、在庫消化型1つ、データ提供型1つ、裁量型3つを並べます。すべて「時間を売る量を減らす」方向の選択肢です。
| サービス | 型 | 稼働との関係 | 公式サイト |
|---|---|---|---|
| PIXTA | ストック型 | 登録した素材が売れるたびに収入。稼働と切り離れる | 公式サイト |
| minne | ストック型 | 作品を並べる。制作は必要だが在庫として残る | 公式サイト |
| BASE | ストック型 | 自分の店を持つ。商品ページは資産として残る | 公式サイト |
| モバオク | 在庫消化型 | 持っているものを売る。一時的な収入 | 公式サイト |
| Uvoice | データ提供型 | 稼働がほぼ不要。提供する情報の範囲を確認する | 公式サイト |
| タイムチケット | 裁量型 | 出す枠を自分で決める。上限を管理できる | 公式サイト |
| ココナラ | 裁量型 | 単価を自分で決める。受注数も調整できる | 公式サイト |
| クラウドワークス | 裁量型 | 案件を選べる。時間単価の低い案件を切れる | 公式サイト |
1. PIXTA|撮った写真が資産になる
写真や動画などの素材を登録し、購入されるたびに収入が発生する形です。この型の本質は「1回作ったものが何度も売れる可能性がある」という点です。
最初は収入になりません。ただし散歩や旅行など、もともとしている行動の中で撮影できるため、追加の稼働時間が発生しにくいという利点があります。
審査があり、被写体の権利(人物・建物・商標など)の確認も必要です。条件を確認してください。
2. minne|作ったものを並べておく
手作りの作品を販売する形です。制作の時間は必要ですが、作った在庫は売れるまで残ります。労働型のように「働かない月は収入ゼロ」にはなりません。
ただし材料費と送料の計算を先にしてください。売れても利益が残らない価格設定にすると、労働型より条件が悪くなります。
3. BASE|自分の店を持つ
ネットショップを開く形です。商品ページは作れば残る資産になります。ただし集客を自分で行う必要があるため、立ち上がりには時間がかかります。
4. モバオク|まず在庫を現金化する
持っているもので使わなくなったものを売る形です。継続収入にはなりませんが、稼働時間がほぼ発生しない収入として最初に手をつける価値があります。
過重労働の状態にある人にとって、「今月だけ稼働を減らしたい」ときの緩衝材として使えます。
5. Uvoice|稼働をほぼ伴わない型
利用状況などのデータ提供に対して対価が発生する形です。稼働時間がほぼ発生しないという点で、この記事の趣旨に最も合致します。
ただし何をどの範囲で提供するのかを、プライバシーポリシーと利用規約で必ず確認してください。金額と引き換えに渡すものがある型です。
6. タイムチケット|出す枠を自分で決める
時間を売る型ですが、「いつ、何枠出すか」を完全に自分で決められます。シフトを入れられる形とは根本的に違います。
過重労働を避けるうえで重要なのは、忙しい月に枠を出さないという選択ができることです。
7. ココナラ|単価を上げて時間を減らす
この記事の文脈での使い方は明確です。単価を上げることで、同じ収入をより短い時間で得る。これが時間を減らす唯一の正攻法です。
実績がついた段階で、価格を上げて受注数を絞るという調整ができます。労働型では単価が固定されるため、この調整ができません。
8. クラウドワークス|効率の悪い案件を切る
案件を選べることが、この文脈での価値です。所要時間を記録して、時間あたりの金額が低い案件から順に切ってください。
参考として、副業の時間あたり収入は平均3,617円/中央値2,083円です。自分の案件がこの水準に対してどこにあるかを計算すると、切る判断がしやすくなります。
手数料、審査基準、利用条件は変更される場合があります。申し込み前に必ず各公式サイトと利用規約で確認してください。
申告するときの伝え方
「申告したほうがよい」と分かっても、伝え方が分からないという声があります。実務的な形を示します。
| 伝えること | 書き方の例 |
|---|---|
| 業務の内容 | 「Web記事の執筆」など、具体的だが簡潔に |
| 契約形態 | 業務委託か雇用契約か。通算の判断に必要な情報 |
| 稼働時間の見込み | 「月10時間以内」など上限を示す |
| 稼働する時間帯 | 「平日夜と土日のみ」など、本業に影響しないことを示す |
| 競合しないこと | 取引先や同業ではないことを明示する |
| 情報の扱い | 自社の情報を使わないことを明示する |
会社が気にするのは「本業に影響が出るか」「競合しないか」「情報が漏れないか」の3点です。この3つに先回りして答えれば、承認される確率は上がります。
逆に、「収入がいくらか」は基本的に会社の関心事ではありません。聞かれない限り、金額を細かく説明する必要はありません。
断られた場合
- 理由を確認する — 全面禁止なのか、条件が合わないだけなのかで対応が変わります
- 条件を変えて再提案する — 稼働時間の上限を下げる、業種を変えるなど
- 投資や資産の活用は別枠 — 労働ではないため、多くの規定では対象外です
- 隠して始めない — 一度断られた後の無申告は、規定違反として重く扱われます
4番目が最も重要です。断られた後に隠して始めるのは、最初から無申告で始めるより状況が悪くなります。
今日やること
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 本業の残業+副業の稼働+移動時間を合計する |
| 2 | 45時間を超えていたら、まず稼働を減らす |
| 3 | 就業規則を確認し、届出制なら申告する |
| 4 | 案件ごとの時間あたり金額を計算する |
| 5 | 低い案件を切って、その分をストック型に回す |
| 6 | 稼働しない曜日を曜日で固定する |
2番目を後回しにしないでください。収入の組み替えには時間がかかりますが、稼働を減らすのは今日できます。
最後に一点だけ付け加えます。この記事は副業をやめることを勧めるものではありません。過重労働の26.9%という数字は、逆に言えば7割以上の人は過重労働に至っていないということでもあります。問題は副業そのものではなく、時間の使い方の設計にあります。
チェックリスト
- 本業の残業+副業+移動時間を合計した
- 合計が月45時間を超えていないか確認した
- 雇用契約どうしなら労働時間が通算されることを理解した
- 業務委託でも疲労は合算されることを理解した
- 就業規則を確認し、届出制なら申告した
- 会社のサポート制度があるか確認した
- 危険なサイン(睡眠6時間未満、ニアミスの増加など)を決めた
- 案件ごとの時間あたり金額を計算した
- 稼働しない曜日を固定した
- 労働型以外の型を1つ試すことにした
やめておいたほうがいい進め方
- 申告せずに続ける — 就業規則違反になり、健康管理の対象からも外れます
- 「業務委託だから通算されない」で安心する — 制度の話です。身体は1つです
- 移動時間を数えない — 往復を含めると月45時間を超えます
- 睡眠を削る — 事故に直結します。金額より優先してください
- 「危なかった」を放置する — 回数が増えているなら稼働量に問題があります
- 時間を増やして収入を増やす — 構造を変えないと同じことを繰り返します
- ストック型に一気に切り替える — 最初は収入ゼロです。労働型で支えながら移してください
- 材料費と送料を計算せずに価格を決める — 労働型より条件が悪くなります
よくある質問
Q. 副業をしている人はどのくらい働きすぎているのですか。
過重労働率は26.9%で、本業+副業の残業が月45時間を超える人は3割以上です。そのうち半数以上が本業先に申告していません(パーソル総合研究所 第四回副業調査)。
Q. 会社は把握していないのですか。
ずれがあります。実際の過重労働率26.9%に対し、企業が認識していたのは18.5%です。差は8.4ポイントで、把握されていない時間は健康管理の仕組みの外に置かれます。
Q. 会社に副業を申告するとき、何を伝えればいいですか。
会社が気にするのは「本業に影響が出るか」「競合しないか」「情報が漏れないか」の3点です。業務内容・契約形態・稼働時間の上限・稼働する時間帯・競合しないこと・情報を使わないことを先回りして伝えてください。金額は基本的に会社の関心事ではありません。
まとめ
- 副業をしている人の過重労働率は26.9%。企業の認識は18.5%で8.4ptのずれ
- 本業+副業の残業が月45時間超は3割以上。半数以上が未申告
- 雇用契約どうしなら労働時間は通算される
- 業務委託は通算されないが、疲労は合算される
- 割増賃金は時間外2割5分以上/深夜2割5分以上/法定休日3割5分以上/月60時間超5割以上
- 未申告が危ないのは①就業規則違反 ②健康管理の対象外 ③事故時に争いになるから
- 企業のサポート実施率36.3%(+9.0pt)。申告のほうが有利な会社が増えている
- 計算式は本業の残業+副業の稼働+移動時間
- 根本原因は「時間×単価」でしか収入が増えない構造
- 解決は①単価を上げる ②時間と比例しない型を混ぜる
- ストック型は最初は収入ゼロ。労働型で支えながら移す
- 業務委託でも実態が雇用に近いケースがある(9項目中平均3.3項目に該当)
- 労働者かどうかは契約書の名称ではなく実態で判断される
- 申告時は本業への影響・競合しないこと・情報の扱いに先回りして答える
- 断られた後に隠して始めるのが最も状況が悪い
- 稼働を減らすのは今日できる
制度は改正されます。労働時間の通算・割増賃金・健康管理については厚生労働省、税金については国税庁と居住地の自治体の最新情報を確認してください。各サービスの手数料・審査基準・利用条件は公式サイトで確認してください。体調に不安がある場合は医療機関に相談してください。
Sources:
パーソル総合研究所|第四回 副業の実態・意識に関する定量調査
厚生労働省 福岡労働局|時間外、休日及び深夜の割増賃金(労働基準法第37条、第138条)


