「海外では副業が自由」というイメージを持っている人は多いと思います。実際はどうなのか、公的な調査で確認します。
結論を先に言うと、海外でも副業は無制限に自由ではありません。ただし制限の根拠が日本とは違う形で整理されています。そしてその考え方は、日本の制度にも取り込まれてきました。
この記事では、4か国の法的な枠組みを確認したうえで、日本の制度が実際にどう変わったかを追います。読み終えたときに、自分の会社の就業規則をどう読めばいいかが分かる構成にしています。
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この記事で分かること
- イギリス・ドイツ・フランス・アメリカで、副業がどう制限されているか
- 4か国に共通する「制限の根拠」
- 日本の制度が2018年以降どう変わったか
- かつて「日本が参考にすべき」と言われた点が実現したかどうか
- この知識をもとに、自分の就業規則をどう読むか
4か国の法的な考え方
労働政策研究・研修機構(JILPT)が、イギリス・ドイツ・フランス・アメリカの副業・兼業の実態を調査しています。この調査から、各国の法的な枠組みを整理します。
| 国 | 副業の制限に関する考え方 |
|---|---|
| イギリス | 明示的な契約条項がなければ、使用者は労働者の自由時間の就労を制限できない。ただし労働者には黙示の競業避止義務がある |
| ドイツ | 使用者の「正当な利益」に影響しない限り、原則として副業に同意しなければならない |
| フランス | 最高裁が、フルタイム労働者に対し勤務時間外の、雇用主と無関係な仕事を禁じることは、正当な事業上の利益の保護に必須とは認められないと判断している |
| アメリカ | この点に関する法的規制はなく、雇用契約の内容による |
出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)資料シリーズNo.201「諸外国における副業・兼業の実態調査―イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ―」(2026年7月29日確認)
共通しているのは「競業避止」に集約されること
4か国を並べると、共通点が見えてきます。使用者が副業を制限できる根拠は、おおむね競業避止に関わる場合に限られるという構造です。
つまり「勤務時間外に何をするかは基本的に労働者の自由。ただし勤め先と競合したり、正当な利益を害する場合は別」という考え方です。
ここで重要なのは、これが日本の現在の整理とほぼ同じだということです。次章で確認します。
日本の現在地
2018年のモデル就業規則改定が起点
日本で「副業解禁」という言葉が広まったのは、2018年に厚生労働省がモデル就業規則を改定したことがきっかけです。この改定で副業・兼業に関する規定が新設され、勤務時間外に他社等の業務に従事できる旨が示されました。
同時に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が策定されています(平成30年1月)。このガイドラインは令和2年9月と令和4年7月の2回改定されており、2018年当時の解説とは内容が異なります。
日本でも制限できるのは4つの場合に限られる
ガイドラインでは、労働時間以外の時間をどう使うかは基本的に労働者の自由であり、企業がそれを制限できるのは次のような場合に限られるとされています。
- 労務提供上の支障がある場合
- 企業秘密が漏洩する場合
- 企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
- 競業により企業の利益を害する場合
前章の4か国の整理と並べてみてください。「原則自由、ただし競業や正当な利益の侵害は別」という構造は、日本も同じです。
「海外は自由で日本は遅れている」という理解は、少なくとも制度の枠組みとしては正確ではありません。
出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」/同「わかりやすい解説(2025.3)」(2026年7月29日確認)
ただし国のルールは企業に許可を義務づけていない
ここが実務上の要点です。ガイドラインもモデル就業規則も、企業に副業の許可を義務づけるものではありません。国が示した指針であり、実際に認めるかどうかは各企業の判断です。
「国が解禁したのだから自分の会社でもできるはず」という理解は誤りです。判断するのは自社の就業規則です。
「日本が参考にすべき」とされた点は、実現したのか
海外の副業事情を紹介する記事では、以前から「日本もこうすべき」という指摘がされてきました。代表的なものが3つあります。それぞれ、その後どうなったかを確認します。
| かつての指摘 | その後の日本 | 時期 |
|---|---|---|
| 本業と副業を合算した労働時間の規定が必要 | 労働時間の通算の考え方がガイドラインで明確化。いずれも雇用契約なら合算して管理される | 令和2年9月改定ほか |
| 複数で働く人の労災の扱いを整えるべき | 労災保険法が改正。給付基礎日額は全就業先の賃金を合算して算定。複数業務要因災害も新設 | 2020年9月1日施行 |
| 短時間労働者の社会保険を広げるべき | 短時間労働者への適用拡大が段階的に進行中。賃金要件の撤廃も予定 | 2026年10月に賃金要件撤廃予定 |
3つとも、実際に制度化されています。順に詳しく見ます。
労働時間の通算
本業と副業がいずれも雇用契約の場合、労働時間は通算して管理されます。労働基準法上の考え方で、割増賃金の負担や時間外労働の上限規制に関係します。
「本業8時間+副業3時間=11時間」として扱われるということです。ドイツの労働時間法が本業と副業を合算する仕組みを持つと紹介されてきましたが、日本にも通算の考え方があります。
ただし、これが機能するには労働者側からの申告が必要です。公式の案内でも、労働時間の通算のためには労働契約の締結日・期間・所定労働日・所定労働時間などを各就業先に申告する必要があるとされています。届け出ていなければ、合算されません。
労災は全就業先の賃金を合算して算定される
2020年9月1日施行の労働者災害補償保険法の改正で、複数の会社で働く人(複数事業労働者)の扱いが変わりました。
- 労災給付の基礎となる給付基礎日額が、すべての就業先の賃金額を合算した額をもとに算定される
- 複数の会社の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定が判断される
- 1社だけでは労災と認められない場合でも、複数の会社の業務を合わせた負荷が原因と認められれば給付対象になる(複数業務要因災害)
改正前は、災害が起きた会社の賃金だけで給付額が計算されていました。副業をしていて体調を崩した場合、「どちらの会社の業務が原因か」で判断され、どちらでも認められないことがありました。
出典:厚生労働省「労働者災害補償保険法の改正について」/同「複数事業労働者への労災保険給付 わかりやすい解説」(2026年7月29日確認)
社会保険は2026年10月に要件が変わる
短時間労働者が健康保険・厚生年金の加入対象になる要件は次のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 学生でないこと
- 企業規模が被保険者数51人以上(令和9年10月から36人以上、令和11年10月から21人以上、令和14年10月以降は11人以上へ段階的に拡大)
このうち月額8.8万円の賃金要件は、令和8年(2026年)10月に撤廃予定です。最低賃金の上昇により、週20時間以上働けば自動的に8.8万円を超えるようになったためです。
ドイツの「ミニジョブ」のように賃金額で社会保険の適用を線引きする仕組みが紹介されてきましたが、日本では逆に、賃金による線引きをなくす方向に動いています。
出典:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(2026年7月29日確認)
業務委託には通算が及ばない
労働時間の通算は雇用契約どうしの場合の話です。副業が業務委託であれば、労働時間は通算されません。
一見すると「制限がなくて自由」に見えますが、実際には保護も外れます。
| 雇用契約 | 業務委託 | |
|---|---|---|
| 労働時間の通算 | される | されない |
| 最低賃金 | 適用される | 適用されない |
| 労災保険 | 適用される | 原則対象外(特別加入制度あり) |
| 社会保険 | 要件を満たせば加入 | 対象外 |
| 所得区分 | 給与所得 | 事業所得または雑所得 |
この点について、2025年の調査では業務委託による副業で「報酬や業務の裁量が限定され、契約と実態にギャップが生じる」という「労働者性」の問題が指摘されています。契約書上は業務委託でも、実態が指揮命令下の労働に近ければ、本来受けられるはずの保護が抜け落ちます。
契約前に、作業時間の指定があるか、他社の仕事を断る必要があるか、報酬が実質的に時間単位かを確認してください。
企業側の動きも変わっている
副業をめぐる変化は、働く側だけの話ではありません。企業側の対応も動いています。
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 企業の副業容認率 | 過去最高 |
| 全面容認(ルールや制限なく認める) | 2018年の約2倍 |
| 副業社員へのサポート率 | 2023年調査より9.0pt上昇 |
| 副業人材の受け入れ経験がある企業 | 55.6%(前回比+7.0pt) |
注目したいのは「サポート率」です。容認するだけでなく、副業をする社員を支援する取り組みが企業間に広がりつつあるという報告です。
この動きは、前章で見た制度の整備と方向が一致しています。労働時間の通算や労災の合算算定は、企業が社員の副業を把握していることを前提に機能する仕組みです。企業側が把握を前提とした運用に移りつつあるということです。
目的が「収入補填」から変わってきている
同じ調査では、副業をする理由が「収入補填」から「キャリア形成・自己実現」へシフトしていると報告されています。
これを裏づける数字があります。
- 副業経験者の6.7%が副業先に転職している(20代では13.6%)
- 受け入れる企業側でも、55.6%が「副業人材が自社に転職してきたことがある」と回答
副業が転職の入口として機能し始めているということです。4か国の調査で見られた「本業の収入を補うための副業」という像とは、性質が変わってきています。
日本の副業の実態
制度が整っても、実際に広がっているかは別の問題です。日本の直近のデータを確認します。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 正社員の副業実施率 | 11.0%(前回比+4.0pt、調査開始以降で初めて上昇、過去最高) |
| 企業の副業容認率 | 過去最高。全面容認の割合は2018年の約2倍 |
| 副業の時給 | 平均3,617円/中央値2,083円 |
| 1カ月あたりの副業時間 | 平均23.0時間 |
| 本業+副業が月45時間超 | 3割。うち半数は本業先に未申告 |
出典:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」(2025年10月28日発表/調査期間2025年8月1日〜7日/企業調査n=1,500、個人調査n=62,320/2026年7月29日確認)
国際比較について、注意点があります
「日本の実施率は海外と比べて高いのか低いのか」を知りたくなりますが、この記事では単純な比較を行いません。理由は次のとおりです。
- 調査時点が異なります。JILPTの調査は数年前の各国データ、パーソル総合研究所の調査は2025年の日本データです
- 「副業」の定義が国ごとに異なります。正社員のみを対象とするか、パートや契約社員を含むか、自営業をどう扱うかで数値が大きく変わります
- 統計の取り方(政府統計か民間調査か)も揃っていません
定義と時点の異なる数字を並べて「日本は○位」と論じるのは、正確ではありません。制度の枠組みの比較は意味がありますが、率の比較には慎重であるべきです。
この知識を自分の就業規則に当てはめる
ここまでの内容を、実務に落とします。4か国も日本も「原則自由、ただし競業などは別」という構造でした。ということは、確認すべき条項も共通します。
| 確認する条項 | 見るポイント |
|---|---|
| 副業・兼業の条項 | 禁止・許可制・届出制のどれか。記載がない場合もある |
| 競業避止義務 | 4か国すべてで制限の根拠になっていた項目。同業他社での副業は要注意 |
| 秘密保持義務 | 本業の知見を活かす副業ほど線引きの確認が必要 |
| 信用保持・品位保持 | 実名で発信する活動では関係する |
探すキーワードは「副業」「兼業」「二重就職」「服務規律」「遵守事項」「許可」「届出」「競業避止」「秘密保持」です。多くの場合、服務規律または遵守事項の章にあります。
条項が見当たらない場合、禁止されていないと解釈できるケースが多いですが、自己判断せず人事に確認してください。副業そのものの条項がなくても、競業避止義務や秘密保持義務が関係する可能性があります。
参考:厚生労働省「副業・兼業と労働条件」(2026年7月29日確認)
過重労働という共通の課題
制度が整い、企業も容認に動いている一方で、悪化している指標があります。
2025年の調査では、本業の残業と副業を合わせて月45時間を超える人が3割にのぼり、そのうち半数は本業先に申告していないという結果が出ています。過重労働は過去最高水準と報告されています。
月45時間は、労働基準法の時間外労働の原則的な上限として意識される水準です。申告していなければ、本業の企業は労働時間を把握できず、健康管理の仕組みも働きません。
ここで前章の話とつながります。労働時間の通算も、労災の全就業先合算も、申告されていなければ機能しません。制度が整備されたことと、その制度が実際に自分を守ることは、別の話です。
4か国のうちドイツでは労働時間法で本業と副業を合算する規定があり、フランスでは1日10時間・1週48時間を超える労働が原則禁止されていると紹介されてきました。日本にも通算の考え方はあります。違いは制度の有無ではなく、それが実際に運用されているかどうかにあります。
制度を自分のために使うための手順
ここまでを踏まえた、実務的な手順です。
- 就業規則を入手して該当条項を確認する — 副業・兼業、競業避止、秘密保持、信用保持の4か所
- 許可制・届出制・禁止のどれかを判別する — 必要な行動が変わります
- 必要な手続きを済ませる — 届出書の書式と提出先を確認します
- 労働時間を申告する — 契約の締結日・期間・所定労働日・所定労働時間などを各就業先に伝えます。これが通算と労災の合算算定を機能させる前提です
- 月の合計時間を自分で記録する — 本業の残業と副業の合計を把握します。月45時間が意識すべき水準です
- 年間の所得見込みを立てる — 確定申告の要否に関わります
4番目を飛ばす人が多いのですが、ここを省くと制度上の保護がすべて外れます。「届け出ると面倒」ではなく「届け出ないと守られない」と理解してください。
読み替えるときの注意点
海外の制度を自分の状況に当てはめるとき、混同しやすい点が3つあります。
- 「法律で禁止されていない」=「勤務先が認めている」ではない — 就業規則は会社ごとの取り決めです
- 「制度がある」=「運用されている」ではない — 届出の窓口や手続きが実際に整っているかは別問題です
- 国ごとに社会保険・税の仕組みが違う — 働き方の自由度だけを切り出して比べると判断を誤ります
とくに3番目です。副業のしやすさは、労働法だけでなく医療保険や年金の仕組みとセットで決まります。日本の場合、本業で社会保険に加入している人が多いという前提が、副業の設計に影響しています。
海外の事例は「自分の会社の規定が何を根拠にしているか」を考える材料として使ってください。制度の良し悪しを比べること自体が目的ではありません。
制度を調べる目的は、他国と比べて優劣を判断することではありません。自分の勤務先の規定が何を根拠に作られているのかを理解し、必要なら根拠に基づいて相談できる状態になることが目的です。規定の文言だけを見て諦める必要はありません。
よくある質問
Q. 海外では副業が完全に自由なのですか。
いいえ。JILPTの調査によると、欧州でも使用者による制限は概ね競業避止に関わる場合に限られるという整理です。無制限に自由ではありません。アメリカは法的規制がなく、雇用契約の内容によります。
Q. 副業を認めない会社は違法ですか。
違法ではありません。国のガイドラインもモデル就業規則も、企業に許可を義務づけていません。ただし制限できる場合は4つに整理されているため、一律禁止には企業側にも説明の負担があります。
Q. 会社に知られずに副業できますか。
この記事では扱いません。就業規則で届出や許可が必要な場合、隠して行うこと自体が違反にあたります。また、隠していると労働時間の通算も労災の合算算定も機能しません。 もう一点、比較のときに忘れやすい前提があります。海外で副業が広く行われている国でも、本業の労働時間が短いことが背景にある場合があります。制度の違いだけでなく、そもそも使える時間の量が違うという条件も見てください。日本で同じ制度を導入しても、労働時間が変わらなければ結果は同じにはなりません。
まとめ
- イギリス・ドイツ・フランス・アメリカでも、副業は無制限に自由ではない。制限の根拠は概ね競業避止に集約される
- 日本のガイドラインも「原則自由、ただし労務提供上の支障・秘密漏洩・名誉毀損・競業は別」という同じ構造
- ただし国のルールは企業に許可を義務づけていない。判断するのは自社の就業規則
- かつて「日本が参考にすべき」とされた3点は、いずれも制度化された。労働時間の通算、労災の全就業先合算(2020年9月)、社会保険の適用拡大(2026年10月に賃金要件撤廃予定)
- ただし労働時間の通算も労災の合算も、本人の申告が前提で機能する
- 正社員の副業実施率は11.0%。ただし国際比較は定義と時点が異なるため単純比較は避けるべき
制度は変更されることがあります。判断に迷う場合は、公的機関の最新情報を確認してください。
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日本の副業の実態を数字で見たうえで、スキルが残る副業の選び方を確認しておくと判断しやすくなります。
制度の確認が済んで、まず何か試したい場合は、短時間で始められるものから確認する方法もあります。アンケートモニターはその一例です。
条件は変更される場合があります。申し込み前に公式サイトで最新の内容を確認してください。



