副業のメリット・デメリットは、多くの場合「収入が増える/時間がなくなる」という一般論で終わります。
この記事では、調査データのある項目だけを使って整理します。個人の側と企業の側、両方から見ます。両者の利害は一致する部分と、しない部分があります。
この記事で分かること
- 個人が副業をする理由の内訳(データ)
- 実際に起きているデメリットの規模(データ)
- 企業側のメリットとデメリット
- 個人と企業で利害が食い違う点
- デメリットを小さくする具体策
前提となるデータ
| 指標 | 数値 | 前回(2023年)比 |
|---|---|---|
| 正社員の副業実施率 | 11.0% | +4.0pt |
| 男性20代の実施率 | 20.2% | +11.4pt |
| 企業の副業容認率 | 64.3% | +3.4pt |
| 企業の副業受入率 | 29.1% | +4.7pt |
| 企業のサポート実施率 | 36.3% | +9.0pt |
| 副業の時給 | 平均3,617円/中央値2,083円 | — |
| 1か月あたりの副業時間 | 平均23.0時間 | — |
出典:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」(2025年10月28日発表/調査期間2025年8月1日〜7日/企業n=1,500、個人n=62,320/2026年7月30日確認)
個人のメリット
1. 収入が増える(ただし水準を知っておく)
最も分かりやすいメリットです。ただし期待値は数字で持ってください。
時給の中央値は2,083円、1か月あたりの副業時間は平均23.0時間です。単純に掛けると月4万円台になります。平均3,617円という数字は高収入層に引き上げられているため、始めた段階では中央値のほうが近い目安です。
2. 収入源が2つになる
金額そのものより、こちらのほうが構造的な意味を持ちます。本業だけの状態は、収入源が1つに集中している状態です。副業があれば、片方に問題が起きても全額は失いません。
3. 本業以外の経験が得られる
副業の理由として「将来収入への不安」が51.6%挙がっています。この不安に対して、収入額そのものより「他でも通用するか確かめられる」ことが答えになる場合があります。
4. 転職につながることがある
データがあります。副業経験者の6.7%が副業先へ転職しており、20代では13.6%です。企業の副業受入率が29.1%(+4.7pt)で伸びていることが背景にあります。
5. 会社の支援を受けられる場合がある
企業のサポート実施率は36.3%で、前回比+9.0pt。容認率の伸び(+3.4pt)より速く伸びています。「黙認」から「支援」に移りつつあるという変化です。
個人のデメリット
1. 過重労働(最も規模が大きい)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 個人の過重労働率 | 26.9% |
| 企業が認識していた過重労働 | 18.5% |
| 本業+副業の残業が月45時間超 | 3割以上(うち半数以上が本業先に未申告) |
これが最大のデメリットです。約4人に1人が過重労働の状態にあり、企業の認識(18.5%)との間に8.4ポイントのずれがあります。
ずれが意味するのは、働きすぎている人の一部が会社から見えていないということです。見えていなければ、健康管理の対象にもなりません。
2. 労働時間が通算される場合がある
雇用契約どうしなら労働時間は通算されます。副業がアルバイトなら、本業と合算した時間で考えることになります。業務委託なら通算されませんが、疲労は合算されます。
3. 確定申告などの手間が増える
- 所得が年20万円を超えると確定申告が必要(本業が給与所得の場合)
- 20万円以下でも住民税の申告は必要
- 副業がアルバイトなら年末調整が1か所しか受けられない
- 経費の記録は始めた日から残す必要がある
4. 就業規則との調整が必要
企業の容認率は64.3%ですが、逆に言えば約36%は容認していません。「世の中は副業OK」ではなく、自社の規定を確認する必要があります。
5. 契約形態によっては保護が薄い
業務委託は労災保険が原則適用されず、最低賃金の適用もありません。また調査では、業務委託で働く人の労働者性が9項目中平均3.3項目に該当していました。契約上は業務委託でも、実態が雇用に近い働き方をしているケースがあるということです。
企業のメリット・デメリット
| 企業のメリット | 企業のデメリット |
|---|---|
| 社員が外部の知見を持ち帰る | 労働時間の管理が複雑になる |
| 他社の副業人材を受け入れられる(受入率29.1%) | 健康管理の責任範囲が見えにくくなる |
| 採用の接点が増える | 情報漏えい・競業のリスク |
| 定着や満足度への効果を期待できる | 本業のパフォーマンス低下の懸念 |
| 人材の見極めコストが下がる | 優秀な人材が副業先へ移る(転職率6.7%、20代13.6%) |
企業から見ると、受入率29.1%のメリットと、転職率6.7%のデメリットは同じ現象の裏表です。他社の人材を受け入れられるということは、自社の人材が他社に接することでもあります。
利害が食い違う点
ここが実務で重要です。個人にとってのメリットが、企業にとってはデメリットになる項目があります。
| 項目 | 個人 | 企業 |
|---|---|---|
| 副業先への転職 | キャリアの選択肢が増える | 人材の流出 |
| 稼働時間を増やす | 収入が増える | 本業への影響を懸念 |
| 本業と同じ領域の副業 | 単価が高い | 競業・情報漏えいの懸念 |
| 副業の申告 | 手続きが面倒 | 把握しないと管理できない |
この食い違いを理解すると、会社が何を気にしているかが分かります。申告の際に先回りして答えるべきなのは、この3点です。
- 本業に影響が出ないこと(稼働時間の上限を示す)
- 競合しないこと(業種と取引先を明示する)
- 情報を持ち出さないこと(自社の情報を使わないと明示する)
逆に収入がいくらかは、基本的に会社の関心事ではありません。聞かれない限り細かく説明する必要はありません。
デメリットを小さくする5つの実務
| やること | 効果 |
|---|---|
| 1. 就業規則を最初に確認する | 禁止・届出制・許可制で対応が変わる。届出制なら申請する |
| 2. 稼働時間の上限を決める | 過重労働の最大の予防策。移動時間も数える |
| 3. 稼働しない曜日を固定する | 「余った時間で休む」だと休息が残らない |
| 4. 本業の競合は受けない | 競業避止と利益相反を避ける |
| 5. 記録を始めた日から残す | 申告時に必要。所得区分の判断材料にもなる |
2番目について補足します。本業の残業20時間、副業が平均並みの23時間、往復の移動8時間で合計51時間になります。移動を数えていないことが「働きすぎていない」という感覚の原因になりがちです。
危険なサインを決めておく
- 睡眠時間が6時間を下回る日が続いている
- 休日に起きる時刻が2時間以上遅くなっている
- 本業で同じミスを繰り返している
- 「危なかった」と感じる場面(運転・作業)が増えている
該当する場合は、金額の目標より優先して稼働を減らしてください。
向いている人・向いていない人
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| 本業の繁閑がはっきりしている | 本業が常時忙しい |
| 稼働量を自分で調整できる副業を選べる | 毎月決まった金額が必要で、余裕がない |
| 就業規則が容認または届出制 | 就業規則で禁止されている |
| 記録や手続きを負担に感じない | 確定申告の手間を避けたい |
| 収入以外の目的(経験・つながり)もある | 短期で大きな金額を求めている |
右側に複数当てはまる場合、副業より先に本業の労働時間や固定費を見直すほうが、目的に対して効率的な可能性があります。
まとめ
- 正社員の副業実施率は11.0%(+4.0pt)、男性20代は20.2%(+11.4pt)
- 収入の目安は時給中央値2,083円・月23.0時間
- 副業の理由は副収入(趣味資金)62.6%/生活費不足51.6%/将来収入への不安51.6%
- 最大のデメリットは過重労働。実施者の26.9%が該当
- 企業の認識は18.5%で8.4ptのずれ。見えていない時間は健康管理の対象外
- 月45時間超が3割以上、うち半数以上が未申告
- 企業のメリット(受入率29.1%)とデメリット(転職率6.7%)は同じ現象の裏表
- 会社が気にするのは本業への影響・競合・情報の3点。収入額ではない
- デメリットの予防は就業規則の確認・稼働上限・休む曜日の固定・競合回避・記録
- 稼働時間には移動時間を含める
調査データは特定時点のものです。制度は改正されるため、労働時間の通算や社会保険については厚生労働省、税金については国税庁と居住地の自治体の最新情報を確認してください。
Sources:
パーソル総合研究所|第四回 副業の実態・意識に関する定量調査

