副業の選択肢の中で、アルバイト(雇用契約)は他の副業と扱いが根本的に違います。
違いは2つです。労働時間が本業と通算されることと、年末調整が1か所しか受けられないこと。この2点を知らずに始めると、会社への申告と確定申告の両方で想定外が起きます。
この記事は、アルバイトを選んだ場合に何が変わるのかを整理します。
この記事で分かること
- アルバイトと業務委託で扱いがどう違うか
- 労働時間の通算が意味すること
- 年末調整が1か所だけになる仕組みと、確定申告が必要になる条件
- 会社に伝えるべきこと
- アルバイトを選ぶ場合に向く仕事
アルバイトと業務委託の違い
| 論点 | アルバイト(雇用契約) | 業務委託 |
|---|---|---|
| 労働時間の通算 | 本業と通算される | 通算されない |
| 所得区分 | 給与所得 | 事業所得または雑所得 |
| 年末調整 | 1か所のみ | 対象外 |
| 必要経費 | 原則として計上できない | 計上できる |
| 最低賃金 | 適用される | 適用されない |
| 労災保険 | 適用される | 原則適用されない |
| 社会保険 | 要件を満たせば加入対象 | 対象外 |
| 収入の安定 | 時給×時間で確定する | 案件次第 |
アルバイトの利点は下2行にあります。労災が適用され、収入が確定する。この2点は業務委託にはありません。
一方で、上3行が制約になります。順に見ていきます。
労働時間が本業と通算される
雇用契約どうしの場合、労働時間は通算されます。本業と副業のどちらも雇用契約なら、合算した時間で考えることになります。
これが実務で意味することは3つです。
| 影響 | 内容 |
|---|---|
| 勤務先への申告 | 通算の管理が必要になるため、本業への申告を求められることがある |
| 割増賃金 | 合算して法定労働時間を超える部分の扱いが問題になる |
| 健康管理 | 長時間労働への対応は、会社が時間を把握していることが前提になる |
1行目が最も現実的な論点です。「1日だけのアルバイトだから関係ない」ではありません。雇用契約であれば通算の対象です。
なお割増賃金の率は労働基準法第37条で定められており、時間外は2割5分以上、深夜(原則22時〜5時)は2割5分以上、法定休日は3割5分以上、月60時間超の時間外は5割以上です。月60時間超の5割以上は2023年4月1日から中小企業にも適用されています。
出典:厚生労働省 福岡労働局「時間外、休日及び深夜の割増賃金」
年末調整は1か所しか受けられません
ここが税務上の最大の違いです。年末調整は「主たる給与」の支払者1か所でのみ行われます。
| 状況 | 扱い |
|---|---|
| 本業 | 扶養控除等申告書を提出し、年末調整を受ける |
| 副業のアルバイト | 扶養控除等申告書を提出できないため、年末調整されない |
| 副業側の源泉徴収 | 年末調整されない区分で源泉徴収される |
| 結果 | 自分で確定申告して精算することになる |
つまり副業のアルバイト分は、放っておくと精算されません。納めすぎている場合も、足りない場合もあり得ます。
確定申告が必要になる条件
ここは業務委託の「所得20万円超」とは基準が違います。混同しやすい部分です。
| ケース | 申告の要否 |
|---|---|
| 本業以外の給与収入とその他の所得の合計が20万円を超える | 確定申告が必要 |
| 20万円以下 | 確定申告は不要でも住民税の申告は必要 |
| 2か所以上から給与を受けている | 年末調整されない分があるため、申告が必要になる場合がある |
| 医療費控除などを受ける | 申告するなら副業分も含めて申告する |
1行目で重要なのは「収入」であって「所得」ではない点です。業務委託なら経費を引いた所得で判定しますが、給与所得は経費を引く仕組みがないため、収入がそのまま基準に当たります。
これが「アルバイトのほうが基準に達しやすい」という結果を生みます。
出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」(2026年7月30日確認)
令和7年度改正後の控除の水準
あわせて控除の金額も確認してください。令和7年度の税制改正で引き上げられています。
- 給与所得控除の最低保障額:55万円 → 65万円
- 基礎控除:48万円から段階的に最大95万円まで
- 所得税がかからない給与収入:160万円まで(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)
- 扶養親族等の要件:合計所得金額58万円以下(給与のみなら年収123万円以下)
出典:財務省「令和7年度税制改正の大綱」
「103万円の壁」の数字は変わっています。古い記事の金額をそのまま参照しないでください。
社会保険の扱い
アルバイトを継続的に行う場合、社会保険の加入要件に関わることがあります。
短時間労働者への適用拡大が進んでいます。賃金要件は2026年10月に撤廃される予定で、週20時間以上が基準になります。継続してシフトに入る予定があるなら、勤務先に加入対象かどうかを確認してください。
本業で既に社会保険に加入している場合、副業先でも要件を満たすと手続きが必要になる場合があります。この判断は個別の事情によるため、勤務先または年金事務所で確認してください。
会社に伝えるべきこと
労働時間が通算される以上、隠して行うことの合理性は低くなります。
| 伝える内容 | 理由 |
|---|---|
| 契約形態が雇用契約であること | 通算の判断に必要な情報 |
| 勤務する時間帯と時間数 | 上限を示すと承認されやすくなる |
| 業務の内容 | 競合しないことを示す |
| 本業に影響しないこと | 会社が最も気にする点 |
まず就業規則の副業規定を確認してください。禁止・届出制・許可制のどれかで対応が変わります。
なお企業側の状況として、副業の容認率は64.3%、サポート実施率は36.3%(前回比+9.0pt)という調査結果があります(出典:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」)。支援の伸びが容認の伸びを上回っており、申告したほうが動きやすい会社が増えています。
それでもアルバイトを選ぶ理由
制約を並べましたが、アルバイトが合っている場合があります。
| こういう人 | アルバイトが合う理由 |
|---|---|
| 今月いくら必要かが決まっている | 時給×時間で収入が確定する |
| 実績を作る段階を飛ばしたい | スキル販売と違い、最初から報酬が発生する |
| けがのリスクが気になる | 労災保険が適用される |
| 1人で作業するのが苦手 | 職場に人がいる。指示を受けられる |
| 体を動かすほうが向いている | 在宅型より合う場合がある |
3行目は軽視されがちですが重要です。業務委託は労災が原則適用されません。身体を使う仕事なら、この差は大きくなります。
会社員が選びやすい形
- 単発・短期(スポットワーク) — シフトの固定がなく、忙しい月は休める
- 土日のみ — 平日の本業に影響しにくい
- 早朝・夕方の短時間 — 通勤の前後で組める
- 閉店時刻が22時より前の職場 — 深夜帯を避けられる
逆に深夜帯のシフトは避けてください。割増賃金は付きますが、翌日の本業への影響が大きく、回復にも時間がかかります。
アルバイト以外を検討する場合
ここまでの制約——労働時間の通算、年末調整が受けられない、経費を計上できない——が気になる場合、雇用契約以外の形も比較しておいてください。
| 形 | アルバイトと比べた違い | 確認すること |
|---|---|---|
| スキル販売(業務委託) | 労働時間が通算されず、経費も計上できる。単価を自分で決められる | 実績がつくまで収入が出にくい。労災は原則適用されない |
| アンケート・調査モニター | 雇用契約ではない。中断しやすく、稼働量を自分で決められる | 時間あたりの水準は低い。交換レートと最低交換額を確認する |
「今月いくら必要か決まっている」ならアルバイト、「働く時間を自分で管理したい」なら業務委託型という切り分けになります。
ココナラスキルマーケット
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始める前のチェックリスト
- 本業の就業規則を確認した(禁止・届出制・許可制のどれか)
- 雇用契約であるため労働時間が本業と通算されることを理解した
- 年末調整が副業先では受けられないことを理解した
- 申告の基準が「収入」20万円超(所得ではない)であることを確認した
- 20万円以下でも住民税の申告は必要と理解した
- 継続して入る場合、社会保険の加入要件を勤務先に確認した
- シフトの終了時刻を確認した(深夜帯を避ける)
- 源泉徴収票を受け取り、保管することにした
やめておいたほうがいい進め方
- 「1日だけだから通算されない」と考える — 雇用契約なら対象です
- 年末調整で精算されると思い込む — 副業先では年末調整されません
- 「所得20万円以下」で判断する — 給与所得は収入で判定します
- 源泉徴収票を捨てる — 申告に必要です
- 深夜帯のシフトを続ける — 割増は付きますが本業への影響が大きくなります
- 就業規則を確認せずに始める — 通算の管理があるため、把握される可能性があります
- 経費を計上しようとする — 給与所得では原則できません
よくある質問
Q. アルバイトと業務委託はどちらがいいですか。
目的で変わります。収入を確定させたい・労災の適用を受けたいならアルバイト、労働時間を通算されたくない・経費を計上したいなら業務委託です。
Q. 副業でも年末調整をしてもらえますか。
できません。年末調整は「主たる給与」の支払者1か所でのみ行われます。副業先の分は自分で確定申告して精算することになります。
Q. 1日だけのアルバイトでも会社に言うべきですか。
就業規則を確認してください。雇用契約であれば労働時間は通算されます。「1日だけ」も規定の対象です。
まとめ
- アルバイトは労働時間が本業と通算される(雇用契約どうしの場合)
- 年末調整は1か所のみ。副業先の分は自分で精算する
- 申告の基準は「収入」20万円超。給与所得は経費を引かない
- 20万円以下でも住民税の申告は必要
- 令和7年度改正で給与収入160万円まで所得税なし。扶養は年収123万円以下
- 割増賃金は時間外2割5分以上/深夜2割5分以上/法定休日3割5分以上/月60時間超5割以上
- アルバイトの利点は収入が確定することと労災が適用されること
- 企業の副業容認率64.3%、サポート実施率36.3%(+9.0pt)。申告のほうが動きやすい会社が増えている
- 会社員が選びやすいのは単発・土日・早朝夕方の短時間。深夜帯は避ける
制度は改正されます。労働時間の通算と割増賃金については厚生労働省、税金については国税庁と居住地の自治体、社会保険については日本年金機構の最新情報を確認してください。この記事は税務・法務上の助言ではありません。
Sources:
国税庁|No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
厚生労働省 福岡労働局|時間外、休日及び深夜の割増賃金
財務省|令和7年度税制改正の大綱
パーソル総合研究所|第四回 副業の実態・意識に関する定量調査




