暗号資産を始めるとき、最初に確認すべきことは①取引する業者が金融庁の登録を受けているかと②税金の扱いです。値動きの予想より前の問題です。
とくに税金は、2026年時点で制度が変わる方向にあります。令和8年度税制改正の大綱に、暗号資産の課税を見直す内容が盛り込まれました。現行の扱いと合わせて整理します。
最初に前提をお伝えします。この記事は特定の金融商品やサービスの購入を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本が保証されません。損失が生じる可能性があります。判断はご自身で行ってください。
この記事で分かること
- 暗号資産が他の資産と構造的に違う点
- 金融庁の登録を確認する具体的な方法
- 税金の現行の扱いと、改正の方向
- 手数料とスプレッドという確実なマイナス
- 保管のリスクと、詐欺の見分け方
他の資産と構造的に違う点
| 論点 | 株式・投資信託 | 暗号資産 |
|---|---|---|
| 収益の源 | 価格変動+配当・分配金 | 価格変動のみ |
| 判断材料 | 企業が決算等を公表する | 需給と規制の動向が中心 |
| 取引時間 | 市場が開いている時間 | 休みがない |
| 価格の変動幅 | 相対的に小さい | 大きくなりやすい |
| 保管 | 証券会社が管理する | 取引所に預けるか自分で管理する |
| NISA | 対象になり得る | 対象外 |
| 投資者保護基金 | 証券会社の破綻時に枠組みがある | 同じ枠組みはない |
| 課税 | 申告分離課税20.315% | 現行は雑所得として総合課税 |
この表で重要なのは1行目です。株式には配当、債券には利息、不動産には賃料という「分配」の仕組みがありますが、暗号資産にはそれに相当するものがありません。価格が上がらなければ収益が発生しない構造です。
また6行目と7行目も押さえてください。NISAの対象外であり、証券会社の破綻時に働く日本投資者保護基金と同じ枠組みもありません。
【最初に確認】業者の登録
暗号資産の交換業を国内で行うには登録が必要です。登録を受けているかどうかは、金融庁の公開情報で確認できます。
| 確認先 | 用途 |
|---|---|
| 免許・許可・登録等を受けている事業者一覧 | 暗号資産交換業者などの登録の有無を確認する |
| 無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について | 金融庁(財務局)が警告書を発出した業者の名称を確認する |
| 無登録業者との取引は要注意 | 無登録業者と取引した場合のリスクを確認する |
なお金融庁は、業種を横断して一括検索できる「金融事業者一括検索機能」の運用を2026年1月30日に開始しています。業者名から登録状況を調べられます。
出典:金融庁「『金融事業者一括検索機能』の運用開始について」
登録業者であっても、価格変動によって損失が生じる可能性は変わりません。登録の確認は「業者そのもののリスク」を下げるためのもので、値動きのリスクとは別の話です。
税金:現行の扱い
暗号資産の取引により生じた損益は、原則として雑所得に区分されます。雑所得は総合課税のため、給与など他の所得と合算して税率が決まります。
| 項目 | 現行の扱い |
|---|---|
| 所得区分 | 原則として雑所得 |
| 課税方式 | 総合課税(他の所得と合算) |
| 税率 | 所得金額に応じて変わる |
| 損失の繰越 | 雑所得の損失は他の所得と損益通算できない |
| 確定申告 | 本業が給与所得で、所得が年20万円を超えると必要 |
| 住民税 | 20万円以下でも申告は必要 |
出典:国税庁「No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係」、国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」
課税されるタイミングを誤解しないでください
ここが最も見落とされやすい部分です。「円に戻していないから関係ない」という理解は誤りになり得ます。
国税庁のFAQでは、暗号資産の分裂・分岐、マイニング、ステーキング、レンディングにより暗号資産を取得した場合の扱いや、収入の計上時期についても取り上げられています。
したがって、確認すべき論点は次のとおりです。
- 売却して円にした場合
- 他の暗号資産と交換した場合
- 商品やサービスの決済に使用した場合
- マイニング・ステーキング・レンディングで取得した場合
- 分裂・分岐により取得した場合
これらの扱いは国税庁のFAQに整理されています。自分の取引がどれに当たるかを確認してください。この記事で個別の判断を断定することはしません。
実務上の対応は明確です。取引の記録(日時・銘柄・数量・価格・手数料)をすべて残してください。後から集計するのは非常に手間がかかります。
税金:改正の方向
令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日 閣議決定)に、暗号資産の課税を見直す内容が盛り込まれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税方式 | 居住者が「特定暗号資産」を暗号資産取引業者に譲渡した場合の譲渡益について、20%(所得税15%・住民税5%)の申告分離課税とする |
| 損失の繰越 | 特定暗号資産の譲渡による損失について、一定の要件のもとで3年間の繰越控除を認める |
| 業者の報告義務 | 暗号資産取引業者は、取引を行った居住者の情報等を翌年1月31日までに税務署へ報告する |
| デリバティブ | 特定暗号資産デリバティブ取引を、先物取引に係る雑所得等の課税の特例等の対象に含める |
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」
適用の時期と条件に注意してください
この分離課税には条件と時期があります。
- 対象は「特定暗号資産」とされているもの。すべての暗号資産が自動的に対象になるわけではありません
- 国内の暗号資産取引業者への譲渡という条件があります
- 適用の開始は金融商品取引法の改正の施行に関係します
したがって、「暗号資産の税金は20%になった」という理解は正確ではありません。現時点で行う取引がどちらの扱いになるかは、必ず国税庁の最新情報で確認してください。
手数料とスプレッド
価格が上がるかは分かりませんが、費用は確実に発生します。
| 確認する費用 | 内容 |
|---|---|
| 売買手数料 | 取引ごとにかかる分。取引の方式によって異なる場合がある |
| スプレッド | 買値と売値の差。「手数料無料」と表示されていても実質的な費用になる |
| 入出金の手数料 | 日本円の入金・出金にかかる場合がある |
| 送付(出庫)の手数料 | 他のアドレスへ送る場合の手数料。ネットワーク側の費用も発生する |
| レバレッジ取引の費用 | 建玉を持ち続ける間にかかる費用がある場合がある |
2行目を必ず確認してください。暗号資産では「手数料無料」の表示があっても、スプレッドが実質的な費用になります。同じ瞬間に買ってすぐ売ると、その差の分だけマイナスになります。
保管のリスク
暗号資産には、他の資産にない論点があります。アクセスできなくなると取り戻せない場合があるという点です。
| 保管の方法 | リスク |
|---|---|
| 取引所に預ける | 取引所側の障害・不正アクセス・事業の継続性 |
| 自分で管理する | 秘密鍵やパスワード、復元用の情報を失うとアクセスできなくなる |
どちらにもリスクがあり、「安全な保管方法」は存在しません。リスクの種類が変わるだけです。
最低限やっておくこと
- 二段階認証を設定する — SMSよりも認証アプリのほうが安全とされます
- パスワードを他のサービスと使い回さない — 流出したパスワードは自動で試されます
- 公式アプリ・公式サイトからのみアクセスする — 検索結果の広告や、メール内のリンクから入らない
- 送付先アドレスは必ず確認する — 送金は取り消せません
- 復元用の情報を安全に保管する — 撮影してクラウドに置くのは避ける
- 秘密鍵や復元フレーズを誰にも教えない — 正規のサポートが求めることはありません
最後の項目が最も重要です。「サポートです。復元フレーズを教えてください」という連絡は詐欺です。例外はありません。
詐欺の見分け方
| 特徴 | なぜ危険か |
|---|---|
| 「元本保証」「必ず増える」 | 暗号資産に元本保証はありません |
| SNS・マッチングアプリ経由の勧誘 | 記録が残らず、相手の特定も困難です |
| 「あなただけ」「今だけ」 | 判断の時間を与えない手法です |
| 出金時に追加の手数料や税金を求められる | 資金を回収できない典型的な流れです |
| 登録が確認できない業者 | 金融庁の一覧で名前を探してください |
| 復元フレーズや秘密鍵を求める | これを渡すと資産を移されます |
| 「自動で増える運用」を勧める | 仕組みを説明できないものは扱わないでください |
4行目は特に覚えておいてください。「利益が出たので出金できます。ただし税金を先に払ってください」という流れは、追加の支払いを引き出す手口です。正規の取引では、税金を業者に先払いすることはありません。
契約や金銭のトラブルは消費者ホットライン「188(いやや)」または最寄りの消費生活センターに相談できます。
始める前の順番
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 生活に必要な現金を確保する |
| 2 | 固定費を見直す(手取りを増やすほうが確実で、効果が続く) |
| 3 | 金融庁の一覧で業者の登録を確認する |
| 4 | 手数料とスプレッドを確認する |
| 5 | 税金の扱い(現行は雑所得・総合課税)を確認する |
| 6 | 二段階認証とパスワードを設定する |
| 7 | 取引の記録を残す仕組みを作る |
| 8 | 失っても生活に影響しない金額で始める |
1番目と2番目を飛ばさないでください。暗号資産は価格の変動幅が大きいため、生活資金で行うと下落時に売らざるを得なくなります。
取引記録の残し方
暗号資産は記録を残していないと申告の集計ができません。株式のように年間取引報告書で完結する仕組みがないためです。
| 残す項目 | 理由 |
|---|---|
| 取引の日時 | どの年の所得になるかが決まる |
| 銘柄 | 銘柄ごとに取得価額を計算する |
| 数量 | 取得価額の計算に必要 |
| 価格(円換算) | 取引時点の価格が必要になる |
| 手数料 | 計算に影響する |
| 取引の種別 | 購入・売却・交換・決済・報酬の受取などを区別する |
| 取引所・ウォレット | 複数使っている場合、どこで行った取引かを記録する |
実務としての進め方は次のとおりです。
- 取引所の取引履歴をダウンロードできるか確認する — CSV等で出力できる場合が多い
- 年に一度ではなく、月に一度まとめる — 期間が長くなるほど作業量が増える
- 複数の取引所を使う場合は統合して管理する — 銘柄ごとの取得価額は全体で計算する
- 取引所を解約する前に履歴を保存する — 解約後は取得できない場合がある
4番目が見落とされやすい点です。取引所のサービスが終了した後では、履歴を取得できなくなる可能性があります。使わなくなった取引所でも、履歴は先に保存しておいてください。
複数の取引所を使う場合の注意
銘柄ごとの取得価額は、取引所ごとに別々ではなく、全体で計算する考え方になります。A取引所で買った同じ銘柄をB取引所で売った場合も、計算は連続します。
そのため、取引所を増やすほど記録の管理は複雑になります。始めた段階では1つに絞るほうが、申告時の負担が小さくなります。
計算方法や個別の判断については、国税庁のFAQを確認するか、税務署・税理士に相談してください。
会社員が確認すること
- 就業規則 — 投資は一般に副業規定の対象外とされることが多いですが、規定の文言を確認してください
- 確定申告 — 暗号資産は雑所得のため、源泉徴収で完結しません。所得が年20万円を超えると申告が必要です
- 住民税 — 20万円以下でも申告は必要です
- 記録 — 取引の記録がないと申告時に集計できません。年をまたぐ前に整理してください
2番目が株式投資との大きな違いです。特定口座(源泉徴収あり)のような仕組みがないため、自分で計算して申告することになります。
レバレッジ取引には触れない判断
暗号資産には、証拠金を預けて実際の資金より大きな金額で取引するレバレッジ取引という形式があります。始める段階では扱わないことをおすすめします。
| 論点 | 現物取引 | レバレッジ取引 |
|---|---|---|
| 最大の損失 | 投じた金額まで | 証拠金を超える損失が生じ得る |
| 強制決済 | ない | 価格が動くと自動的に決済される場合がある |
| 保有中の費用 | 基本的にない | 建玉を持ち続ける間にかかる場合がある |
| 値動きの影響 | そのまま | 倍率の分だけ拡大する |
| 判断に必要な時間 | 比較的余裕がある | 短時間での判断が必要になる |
1行目と2行目が現物との決定的な違いです。暗号資産は価格の変動幅が大きいため、レバレッジをかけると短時間で強制決済に至る可能性があります。
本業がある人にとって、「短時間での判断が必要になる」という性質は現実的ではありません。仕事中に値動きを追えないためです。
「積立」という形式について
一定額を定期的に購入する設定ができるサービスもあります。この形式が有利かどうかをこの記事で断定はしませんが、実務上の性質を整理します。
- 購入のタイミングを分散できる — 一度に買うより価格の判断が要らなくなる
- 手間が減る — 毎回の操作が不要になる
- 下落局面でも購入が続く — これは利点にも欠点にもなる
- 元本保証ではない — 積立でも損失が生じます
- 記録は残る — 購入のたびに取得価額の計算対象になります
最後の項目は税務上の実務です。積立の回数が増えるほど、取得価額の計算対象となる取引が増えます。記録の管理は自動化されるわけではないため、履歴の保存を確認してください。
サービスの条件を確認する
取扱通貨、手数料、スプレッド、入出金の条件、レバレッジの有無はサービスごとに異なり、変更されます。必ず公式サイトで最新の内容を確認してください。
GMOコイン暗号資産交換業者
金融庁への登録を受けた暗号資産交換業者です。暗号資産は価格の変動が大きく、購入時より下がれば損失が出ます。元本は保証されません。取扱通貨、各種手数料、口座開設に必要な書類は変更されることがあるため、申し込み前に公式サイトで最新の条件を確認してください。
あわせて、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で暗号資産交換業者としての登録を確認してください。登録業者であっても、価格変動による損失の可能性は変わりません。
チェックリスト
- 暗号資産には配当・利息・賃料に相当する「分配」がないことを理解した
- NISAの対象外であり、投資者保護基金と同じ枠組みもないことを確認した
- 金融庁の一覧で業者の登録を確認した
- 現行の税金の扱いが雑所得・総合課税であることを確認した
- 売却以外のタイミング(交換・決済・ステーキング等)の扱いを国税庁のFAQで確認した
- 令和8年度税制改正の大綱の内容と、適用の条件・時期を確認した
- スプレッドが実質的な費用になることを確認した
- 二段階認証を設定した
- パスワードを他のサービスと使い回していない
- 復元用の情報を安全に保管した
- 取引の記録(日時・銘柄・数量・価格・手数料)を残す仕組みを作った
- 失っても生活に影響しない金額にした
やめておいたほうがいい進め方
- 生活資金で始める — 変動幅が大きいため、下落時に売らざるを得なくなります
- 登録を確認せずに取引する — 金融庁の一覧で確認できます
- 「円に戻していないから税金は関係ない」と考える — 交換や決済での使用も論点になり得ます
- 取引の記録を残さない — 申告時に集計できません
- 「暗号資産の税金は20%になった」と考える — 対象・条件・適用時期があります
- 「手数料無料」だけで判断する — スプレッドが実質的な費用です
- 復元フレーズや秘密鍵を人に教える — 正規のサポートが求めることはありません
- 出金時に追加の支払いを求められて応じる — 資金を回収できない典型的な流れです
- SNSやマッチングアプリ経由の勧誘に応じる — 記録が残らず、回収も困難です
- 借入をして始める — 損失が出ても返済義務は残ります
よくある質問
Q. 暗号資産の税金は20%になったのですか。
正確ではありません。現行は雑所得として総合課税です。令和8年度税制改正の大綱に特定暗号資産の譲渡益を20%の申告分離課税とする内容が盛り込まれていますが、対象・条件(国内の登録業者への譲渡)・適用時期があります。国税庁の最新情報で確認してください。
Q. 手数料無料の取引所ならコストはかかりませんか。
かかります。買値と売値の差(スプレッド)が実質的な費用です。同じ瞬間に買ってすぐ売ると、その差の分だけマイナスになります。
Q. 会社員は確定申告が必要ですか。
暗号資産は雑所得のため、特定口座のような源泉徴収の仕組みがありません。所得が年20万円を超えると確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は必要です。
まとめ
- 暗号資産には配当・利息・賃料に相当する「分配」がない。価格変動だけが損益の源
- NISAの対象外。証券会社の破綻時に働く投資者保護基金と同じ枠組みもない
- まず金融庁の一覧で業者の登録を確認する。2026年1月30日から一括検索機能あり
- 現行の税金は雑所得・総合課税。他の所得と合算される
- 売却以外(交換・決済・ステーキング等)も論点になる。国税庁のFAQで確認する
- 令和8年度税制改正の大綱で特定暗号資産の譲渡益に20%の申告分離課税、損失は3年繰越の方向。ただし対象・条件・適用時期がある
- スプレッドが実質的な費用。「手数料無料」だけで判断しない
- 保管は取引所も自己管理もリスクがある。「安全な方法」はない
- 二段階認証、パスワードの使い回し回避、復元情報の保管は最低限
- 復元フレーズを求める連絡は詐欺。出金時に追加の支払いを求める話も同様
- 取引の記録(日時・銘柄・数量・価格・手数料)を始めた日から残す
- 失っても生活に影響しない金額で始める
この記事は特定の金融商品やサービスの購入を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本が保証されず、損失が生じる可能性があります。制度と税制は改正されるため、税金は国税庁、業者の登録は金融庁の最新情報で確認してください。個別の判断については、必要に応じて税務署や専門家にご相談ください。
Sources:
国税庁|No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係
国税庁|暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)
財務省|令和8年度税制改正の大綱
金融庁|免許・許可・登録等を受けている事業者一覧
金融庁|無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について
金融庁|「金融事業者一括検索機能」の運用開始について


