この記事はLINE証券の使い方を紹介する内容でしたが、LINE証券の証券サービスは終了しました。お客様の資産と証券サービスは2024年8月13日に野村證券へ移管されています。
そこでこの記事は、内容を差し替えて「証券会社が撤退したときに口座と資産はどうなるのか」という観点で整理し直します。LINE証券の事例は、実際に起きたケースとして参考になります。
最初に前提をお伝えします。この記事は特定の金融商品やサービスの購入を推奨するものではありません。投資は元本が保証されず、損失が生じる可能性があります。
この記事で分かること
- LINE証券に何が起きたのかの時系列と、いま資産を確認する方法
- 証券会社が撤退するとき、投資家に何が起きるのか
- 「撤退」と「破綻」の違いと、それぞれの保護の仕組み
- 分別管理と日本投資者保護基金の内容
- 口座を選ぶときに確認しておくこと
LINE証券に起きたことの時系列
| 時期 | 起きたこと |
|---|---|
| 2023年6月12日 | 野村ホールディングスがLINE証券の事業再編を発表。証券事業を会社分割(吸収分割)の方法により野村證券に移管することを公表 |
| 2023年7月21日 | いちかぶ取引および現物取引の買付が、同日約定分で終了 |
| 2024年3月末まで | LINE CFD の口座閉鎖予定 |
| 2024年7月25日 15時 | 現物取引の売却の受付が終了 |
| 2024年7月30日 12時 | LINE Pay および金融機関への出金が終了 |
| 2024年8月13日 | お客様の資産および証券サービスが野村證券へ移管 |
| 現在 | LINE FX はLINE証券としてサービス提供を継続 |
出典:野村ホールディングス「LINE証券の事業再編に関するお知らせ」(2023年6月12日)、LINE証券「LINE証券で保有していた株式や現金などの残高、証券サービスについて」
注目すべきは期間の長さです。発表から資産の移管完了まで、およそ1年2か月かかっています。突然口座が使えなくなったわけではなく、段階を追って進みました。
ただし、買付の停止は発表から約1か月後でした。「まだ売買できる」と思っている間に、買う側は先に止まっています。
自分の資産がどうなっているかの確認手順
LINE証券に口座を持っていた場合、次の手順で確認してください。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 2024年8月13日に野村證券へ移管された可能性を前提に確認する |
| 2 | 移管の案内(郵送物・メール)が届いていないか確認する。部店・口座番号が記載されている |
| 3 | 案内が見つからない場合、野村證券の問い合わせ窓口に連絡する |
| 4 | NISA口座、年間取引報告書、配当金通知などの扱いも野村證券に確認する |
| 5 | 過去に口座を閉鎖していた場合の報告書等も野村證券に問い合わせる |
| 6 | FX口座については、LINE証券側の案内を確認する(LINE FXは継続) |
LINE証券の案内でも、証券サービスに関する問い合わせは野村證券の窓口とされています。過去に口座を閉鎖した場合や既に移管済みの場合の報告書についても、野村證券への問い合わせが案内されています。
「放置していた少額の残高」も対象になり得ます。金額が小さくても、確認してください。
撤退と破綻は別の話です
ここが最も誤解されやすい部分です。事業からの撤退(事業再編)と、経営破綻はまったく違います。
| 比較 | 撤退・事業再編 | 経営破綻 |
|---|---|---|
| 資産の扱い | 他社へ移管される、または売却・出金の期間が設けられる | 分別管理されていれば基本的に返還される |
| スケジュール | 事前に公表され、段階的に進む | 突発的に起こり得る |
| 投資家の対応 | 案内に従って手続きする | 破産手続や返還手続に従う |
| 保護の仕組み | 移管先が引き継ぐ | 分別管理+日本投資者保護基金 |
LINE証券のケースは前者(事業再編による撤退)です。資産が失われたわけではなく、移管されました。
分別管理と日本投資者保護基金
破綻の場合の仕組みも押さえておいてください。
分別管理とは、証券会社が顧客から預かる資産(金銭や株式、債券などの有価証券)と、証券会社自身の財産とを厳格に分離して管理することです。
| 状況 | 結果 |
|---|---|
| 分別管理が行われていた場合 | 顧客が預けていた資産は基本的にすべて返還される |
| 分別管理が行われておらず、円滑に返還できない場合 | 日本投資者保護基金が、返還できない資産を時価で換算した額を支払う。顧客一人当たり上限1,000万円 |
出典:日本投資者保護基金「投資者保護とは」、金融庁「投資者保護」
日本投資者保護基金は、会員証券会社の会費や負担金により運営される民間機関ですが、金融商品取引法に基づき内閣総理大臣および財務大臣に認可された法人で、金融庁と財務省の規制・監督を受けます。
重要なのは「分別管理が前提」という点です。この仕組みは、登録を受けた金融商品取引業者に対する規制のもとで機能します。無登録の業者はこの枠組みの外にあります。
撤退が公表されたときにやること
自分が使っている証券会社が事業再編や撤退を公表した場合、次の順で確認してください。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 買付が止まる日。LINE証券の例では発表から約1か月後だった |
| 2 | 売却できる期限。この日を過ぎると自分の判断で売れなくなる |
| 3 | 出金できる期限。売却期限とは別に設定される |
| 4 | 移管されるのか、自分で移すのか |
| 5 | 移管の基準日(どの時点の残高が対象か) |
| 6 | NISA口座の扱い(後述) |
| 7 | 年間取引報告書などの税務書類の入手先 |
2番目と3番目が実務で効きます。売却期限と出金期限は別に設定されます。売っただけで放置すると、出金期限を過ぎる可能性があります。
また5番目の基準日も重要です。LINE証券の案内では、特定の基準日時点で残高があるかどうかで移管の対象が決まる形が示されていました。詳細は各社の案内で確認してください。
NISA口座には固有の論点があります
NISA口座は1人につき1口座のみという制度です。金融機関を変えるには手続きが必要になります。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 移管先でNISA口座が継続するか | 移管の案内に記載されているかを確認する |
| 自分で金融機関変更をする場合の手続き | 手続きの期限と必要書類 |
| その年の非課税枠の扱い | すでに使った枠がどうなるか |
| 保有している商品の扱い | 移管できるか、売却が必要か |
NISAは非課税保有期間が無期限、生涯の非課税保有限度額1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)、年間の投資枠はつみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=合計360万円という制度です(出典:金融庁「NISAを知る」)。
枠に関わる論点なので、自己判断ではなく、移管先と金融庁の情報で確認してください。
なぜ撤退が起きるのか
「大手のグループ会社だから安心」とは限りません。LINE証券はLINE Financial株式会社と野村ホールディングス株式会社の合弁会社でしたが、事業再編の対象になりました。
事業として続くかどうかは、規模や知名度とは別の要因で決まります。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 手数料競争 | 売買手数料の引き下げが進むと、取引量が少ない事業者は収益を確保しにくくなる |
| システムの維持費 | 証券システムは継続的な投資が必要。利用者数に対して負担が重くなる場合がある |
| 規制対応の負担 | 法令改正への対応コストは規模にかかわらず発生する |
| グループ全体の方針 | 親会社の事業ポートフォリオの見直しで対象になる |
| サービスの重複 | グループ内に同種のサービスがある場合、統合の対象になり得る |
最後の2つはその事業自体が失敗したかどうかとは無関係に起こります。利用者から見て問題がなくても、統合の判断がされることがあります。
つまり「予測して避ける」ことは難しい
正直に書くと、撤退を事前に予測して回避するのは現実的ではありません。できることは別のところにあります。
- 案内を読み落とさない体制 — 登録メールアドレスを使っているものにする。郵送物を確認する
- 残高を把握しておく — 使っていない口座に残高があることを忘れない
- 取得価額の記録を自分でも持つ — いつ・いくらで買ったかを別に残しておく
- 登録業者を選ぶ — 分別管理と投資者保護基金の枠組みの中にいる事業者にする
3番目が地味に効きます。移管時に取得価額の情報が引き継がれていない場合、自分の記録が確認の材料になります。売買のたびに日付・数量・単価をメモしておいてください。
使っていない口座を放置しない
今回のLINE証券のケースで最も見落とされやすいのが、「昔ちょっと使って、そのまま忘れていた口座」です。
少額でも残高があれば移管の対象になり得ます。心当たりがあるなら、金額の大小にかかわらず確認してください。案内が届いていない可能性もあります(住所変更をしていない場合など)。
口座を選ぶときに確認しておくこと
撤退のリスクをゼロにはできませんが、確認できることはあります。
| 観点 | 確認方法 |
|---|---|
| 登録を受けているか | 金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で確認する |
| 無登録業者として警告を受けていないか | 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」 |
| 投資者保護基金の会員か | 日本投資者保護基金の会員一覧で確認できる |
| 取扱商品の幅 | 将来必要になる商品を扱っているか |
| 手数料 | 売買手数料、出金手数料、為替手数料 |
| NISA口座の対応 | 対象商品と、金融機関変更の手続き |
なお金融庁は、業種を横断して一括検索できる「金融事業者一括検索機能」の運用を2026年1月30日に開始しています。業者名から登録状況を調べられます。
出典:金融庁「『金融事業者一括検索機能』の運用開始について」
複数の口座に分けるという考え方
1社に集めると管理は楽になりますが、撤退や障害の影響を全額が受けます。一方で分けると管理の手間が増えます。
| 方針 | 利点 | 負担 |
|---|---|---|
| 1社に集約 | 管理が簡単。取引報告書も1か所 | 撤退・システム障害の影響を全額が受ける |
| 複数に分散 | 1社の問題が全体に及ばない | 管理と申告の手間が増える。NISAは1口座のみ |
どちらが良いかは一律に決まりません。ただしNISA口座は1人1口座という制約があるため、分散にも限界があります。
移管された後にやること
移管の案内が見つかった、または野村證券に口座があることを確認できた場合、次を順に済ませてください。
| 順番 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | オンラインサービスにログインできる状態にする | 部店・口座番号とパスワードの設定が必要になる場合がある |
| 2 | 保有商品と数量が移管前と一致しているかを確認する | 数量の相違があれば早い段階で問い合わせる |
| 3 | 取得価額が表示されているかを確認する | 売却時の損益計算に影響する |
| 4 | 特定口座か一般口座かを確認する | 申告の要否が変わる |
| 5 | NISA口座の状態を確認する | 1人1口座の制度。枠の扱いに関わる |
| 6 | 登録している住所・連絡先を更新する | 次に何かあったときに案内が届く |
2番目と3番目は早めに確認するほど解決しやすい項目です。時間が経つと、当時の記録を探すのが難しくなります。
6番目も忘れないでください。住所が古いままだと、次の案内も届きません。今回案内が届かなかった人の一部は、これが原因です。
売るか、持ち続けるか
移管された資産をどうするかは、ご自身の判断です。この記事では判断のための確認事項のみ挙げます。
- 移管先の売買手数料はいくらか
- その商品を持ち続ける理由が今もあるか(買ったときの目的が有効か)
- 売却した場合の課税(特定口座か一般口座か、NISA口座か)
- 他の口座へ移管(移し替え)できるか、その手数料
2番目が実質的な問いです。「なんとなく持っている」状態が続いているなら、買ったときの目的が今も有効かを確認してください。売る・持ち続けるどちらの判断でも、理由を自分で説明できる状態にしておくことをおすすめします。
税務で確認すること
- 年間取引報告書の入手先 — 移管の前後で発行元が変わる場合があります
- 取得価額の引継ぎ — 移管後の残高に対して、いつ・いくらで買ったかの情報が引き継がれているか
- 特定口座か一般口座か — 移管後にどちらになっているか
- 損失の繰越控除 — 使う場合は確定申告が必要です
2番目は特に確認してください。取得価額の情報が正しく引き継がれていないと、売却時の損益計算が変わります。移管先の口座で保有商品の取得価額が表示されているかを見てください。
個別の判断については、税務署または税理士に確認してください。
他のサービスでも同じことが起きます
この論点は証券会社だけの話ではありません。お金や資産を預けるサービスは、どれも終了・統合の可能性があります。
| サービスの種類 | 終了時に確認すること |
|---|---|
| 証券・投資 | 移管先、売却期限、出金期限、NISAの扱い、取得価額 |
| 暗号資産の取引所 | 出庫(送付)の期限、対応する送付先、手数料 |
| 電子マネー・ポイント | 失効の期限、他のサービスへの移行の可否 |
| ネット銀行 | 移管先、口座振替の付け替え、自動引落の設定変更 |
| サブスクリプション | データのエクスポート期限、課金の停止 |
共通する対応は3つです。
- 登録メールアドレスを、いま使っているものにしておく
- 登録住所を最新にしておく
- 「使っていないが残高があるサービス」の一覧を自分で持っておく
3番目が最も効きます。年に一度でよいので、どこにいくら置いてあるかを書き出してください。案内が届かなくても、自分から確認できる状態になります。
チェックリスト
- LINE証券に口座を持っていた場合、野村證券への移管(2024年8月13日)を前提に確認した
- 移管の案内(部店・口座番号の記載)を確認した
- 案内が見つからない場合、野村證券の窓口に連絡した
- NISA口座、年間取引報告書、配当金通知の扱いを確認した
- 撤退と破綻の違いを理解した
- 分別管理と日本投資者保護基金(上限1,000万円)の内容を確認した
- 使っている証券会社が金融庁の登録一覧にあることを確認した
- 取得価額が移管後の口座で正しく表示されているか確認した
やめておいたほうがいい進め方
- 少額だからと放置する — 移管された資産は残っています。確認してください
- 撤退の案内を読み飛ばす — 買付停止・売却期限・出金期限はそれぞれ別の日付です
- 売却しただけで安心する — 出金期限は売却期限とは別に設定されます
- NISA口座を自己判断で扱う — 1人1口座の制度です。移管先と金融庁の情報で確認してください
- 取得価額を確認しない — 引き継がれていないと売却時の損益計算が変わります
- 登録の有無を確認せずに口座を開く — 金融庁の一覧で確認できます
- 「撤退=資産が消える」と考える — LINE証券のケースでは移管されました。破綻とは別の話です
よくある質問
Q. 証券会社が撤退すると資産は失われますか。
LINE証券のケースでは移管されました。撤退(事業再編)は破綻とは別の話です。破綻の場合も、分別管理が行われていれば預けていた資産は基本的にすべて返還されます。
Q. 口座を複数に分けたほうが安全ですか。
1社の問題が全体に及ばないという利点はありますが、管理と申告の手間が増えます。またNISA口座は1人1口座のため分散に限界があります。一律に決まる話ではありません。
Q. 大手グループの会社なら撤退しませんか。
そうとは限りません。LINE証券はLINE Financial株式会社と野村ホールディングス株式会社の合弁会社でしたが、事業再編の対象になりました。グループ全体の方針やサービスの重複による統合は、その事業の成否とは別に起こり得ます。
まとめ
- LINE証券の証券サービスは終了。資産と証券サービスは2024年8月13日に野村證券へ移管
- 発表は2023年6月12日(野村ホールディングス)。会社分割による移管
- 買付停止は2023年7月21日約定分まで、売却は2024年7月25日15時、出金は2024年7月30日12時で終了
- LINE FXはLINE証券としてサービス提供を継続
- 口座を持っていた人は野村證券の窓口に確認する。少額でも放置しない
- 撤退(事業再編)と破綻は別の話
- 破綻時は分別管理が前提。分別管理されていれば基本的に返還される
- 分別管理されず返還できない場合、日本投資者保護基金が一人当たり上限1,000万円まで補償
- 撤退の案内では買付停止日・売却期限・出金期限を分けて確認する
- NISAは1人1口座。移管時の扱いは案内と金融庁の情報で確認する
- 移管後は数量と取得価額の一致を早めに確認する。住所・連絡先も更新する
- 同じことは暗号資産の取引所・電子マネー・ネット銀行・サブスクでも起こる
- 年に一度、どこにいくら置いてあるかを書き出す
- 口座開設前に金融庁の登録一覧で確認する
なお、この記事の元の内容はLINE証券の使い方の紹介でした。サービスが終了した事実を踏まえて全面的に書き換えています。古い手順を参照して手続きを進めないようご注意ください。
この記事は特定の金融商品やサービスの購入を推奨するものではありません。投資は元本が保証されず、損失が生じる可能性があります。制度は改正されるため、NISAは金融庁、税金は国税庁、業者の登録は金融庁の最新情報で確認してください。個別の手続きについては、該当する金融機関に直接お問い合わせください。
Sources:
野村ホールディングス|LINE証券の事業再編に関するお知らせ(2023年6月12日)
LINE証券|LINE証券で保有していた株式や現金などの残高、証券サービスについて
日本投資者保護基金|投資者保護とは
金融庁|投資者保護
金融庁|NISAを知る
金融庁|免許・許可・登録等を受けている事業者一覧
金融庁|「金融事業者一括検索機能」の運用開始について


